修理完了。リレーの故障ではなかった可能性が・・・
5月にリレー交換で復旧したと思っていたテクニクスのパワーアンプ SE-C01 だが、その後しばらく使い続けていると、「ブツッ」とか「ブチッ」っといった音の後、無音になってしまう症状が発生するようになった。そのまましばらく使用していると回復することもあるのだが、少し経つとまた無音になってしまい、回復した?また無音かぁ、、、を繰り返すようになる。
これが厄介なことに、調子いい日は数時間動いてくれるのだが、翌日はまた安定しないような状況となり、次第に動かない日のほうが多くなってしまう。いよいよアンプの本格的!?な故障かと思い、ネットで修理業者を探したところ、本機での修理実績をいくつか見つけることができた。ただ、修理費用はそれなりに高価で、基本料金(技術料)が20,000~30,000円、修理実費(部品代含む)が20,000円~のようなケースが多く、少なく見積もっても50,000円ぐらいはかかってしまう。いくらビンテージオーディオの修理とはいえ、私にとって簡単に出せる金額ではない。自力で修理が可能なのか、故障個所を特定できるのか、いろいろ調べてみた。
SE-C01の故障・修理事例
調べてみると、修理業者が対応したもの、個人で修理したものなど、いくつか事例が見つかった。
- リレーの故障:接点をクリーニングして復活したケース、交換して復旧したケースなど。
- 電解コンデンサの故障:液漏れ、容量抜けなど。コンデンサ交換で復旧する。
- トランジスタの故障:電極間の短絡や開放など。トランジスタ交換で復旧する。
- その他のデバイス故障:ダイオードや抵抗などの短絡、開放など。これも交換で復旧する。
昔の電気製品(今回のようなビンテージオーディオが該当)は、集積回路(ICやLSIチップ)をほとんど使わずに、個別の部品を組み合わせて設計・製作されているため、故障した部品の交換で復旧できる。最近の製品は、故障してしまうと基板丸ごと交換のようになってしまい、もはや新品を購入したほうが安いのではないかと思えるような事態に陥ってしまうが、古い機器では故障個所を特定して部品さえ入手できれば復旧できる。逆に、その部品が年数の経過とともに入手できないことも発生しうるわけで、代替品を含めて調達できるかがポイントとなる。
さて、今回の不具合について、リレーは先日新品に交換したばかりなので、さすがに再度故障したとは考えにくい。電源オン時にパチンという音もするので、機能はしてそう。その他のデバイスについてはテスターを持っていないため、一つ一つ特性を計測しながら故障部品を特定するということができない。この機器の修理のためだけにテスターを購入するのももったいない気もする。
結果、コストをかけずに部品の調達や作業が比較的容易にできる電解コンデンサの交換を行ってみることにした。
電解コンデンサのスペックを確認
電解コンデンサを交換するといっても、どのコンデンサが故障しているのか特定ができない。外装剥がれや液漏れなど見た目で明らかに通常ではないと判断できれば良いのだが、パット見る限りそのような状態になっているコンデンサは見当たらない。調べてみると電解コンデンサの寿命は10年、15年といわれている中で本機は1980年ごろの製造と思われるため、優に40年は越えて稼働し続けている。故障有無にかかわらず本来の機能は発揮できていないと思われるため、全交換は妥当な対処方法なのかもしれない。
オリジナルの状態がどのようなスペックのコンデンサを利用していたのかを記録に残しながら、交換品となる同等のスペックのコンデンサをネットで注文した。いま、注文すれば7月後半の3連休を使ってゆっくり交換できそうだというタイミングでのチェック作業だった。一部、ネットで同等品を見つけられなかったため、静電容量は同一、定格電圧は現状以上のもので代替品を購入した。



電解コンデンサ購入から交換まで
前回の作業時と同様に、電解コンデンサは共立エレショップのネット通販を利用した。6.3V品が販売されていなかったため10Vを購入した以外は希望の部品をまとめて購入することができた。と思っていたのだが、悲しいことが2点発生。
- コンデンサの部品数のカウントミスが発生していたようで、25V/4.7μFが1つ足りない。納品書通りに部品は入っていたので、私の数え間違え・注文忘れがあったようだ = 1つ不足
- 両極性の電解コンデンサの足がわずかながらに大きく、プリント基板の穴に入らない。このため、交換自体ができない = 2つ不足
というわけで、合計3つコンデンサが不足してしまったのだが、この3つ以外のコンデンサ交換で復活してくれれば「もうけもん」だと思い、交換作業を行った。






交換後、レベルメーターの振れ具合も確かめるため、いつものようにTM NetworkのSelf Controlを流してみる。おおっ、レベルメーターも動くし、いいリズムが流れてくるではないか!と思った矢先、2分ぐらいで、「ブチッ」の音とともにだんまりとなってしまい1曲も完走できない。電源は入っている状態なのだが。電源オフ/オンで症状が変わるわけでもなく、コンデンサは原因ではなかったようだ。

トランジスタ交換する?
電解コンデンサ交換で復旧できなかったため、SE-C01の故障・修理事例を再度調査した。ありとあらゆるネット上の記事に目を通していくと、2SA798というトランジスタを外してみて測定すると電極間が短絡してしまっており、交換で復旧したという事例を見つけた。ただ、この2SA798というトランジスタは今では入手が難しいようで、確かにネット通販でもこの部品を見つけることができない。探した限りヤフオクで2個セットで販売されていたのだが、G型ではなくF型のタイプであったことと(たぶん、どちらを使っても問題ないとは思われるが)、2個セットで2,000円オーバーという少々高めの価格が設定されていた。送料込みで2,400円ぐらい。
明らかに2SA798の故障だと特定できるのであれば、迷わずこのヤフオク販売品を購入することになりそうなのだが、もし購入・交換しても直らなかったらと思うと購入に踏み切れない。たかが2,000円程度なのだが。様々な部品を買い続けて無駄なお金を垂れ流していくよりは、いっそのこと別の中古品を購入したほうが安くつくのではないか、などと逡巡してしまう。
SE-C01に限定せずに2SA798が関係するアンプの故障事例をさらに調査した。テクニクスだけでなくその他のメーカーでも2SA798を交換することで故障から復旧できた事例は確かにいくつかある。ただ、自分のアンプの2SA798が故障しているのかが確信が持てない。引き続き調査をしていく中で、「音を聞いているときに、いきなり、ブッと音を立てる」というケースがあり、これも2SA798交換で復活していた。また「ガサガサ」と雑音が入る時も2SA798の交換で修理できた事例もあった。非常に似通った事象でもあるため、こうなったら自分の2SA798も交換してみるしかない。
もう一度、ネットで2SA798を粘り強く探してみると、若松通商で大量に在庫ありとなっている。しかも、ヤフオクより全然安いし、秋葉原まで行って買ってくれば7/21(月)の三連休最終日のうちに直せるかもしれない!。7/21の午前中に若松通商まで行って2SA798を購入してきた。その時に、注文忘れの電解コンデンサと端子が合わずに交換できていなかった両極性タイプ、その他部品もあわせて購入した。

電解コンデンサの追加交換とトランジスタ交換
7/21午後、自宅に戻ってきてから交換作業を開始。まずは、効果はないだろうなと思いつつ、交換できていなかった電解コンデンサ3つを交換する。これで復旧できればラッキー。だが、予想通り、効果なし・改善しない。

電解コンデンサをすべて交換しても直らなかったため、いよいよ最後の砦となるトランジスタの交換を行う。若松通商に大量に在庫があったこともあり、作業ミスや今後の予備もかねて2SA798を4つ購入した。店員のおじさんが気を利かせてくれて、同じロットで4つ揃えてくれた。最初は無愛想かなと思ったのだが、これとこれを探してほしいと伝えたところ、快く応じてくれた。実は故障個所を特定するために基盤を外した状態で電源を入れたときに過ってドライバーをどこかの回路に接触させてしまい、バチっと火花が飛びヒューズが切れてしまった。ヒューズは5個セット販売だったのだが、ばら売りもOKよと言ってくれて2個購入。また、基板や電源ボックスの出し入れをしているうちにバリスタの1つがぽろっと取れてしまっていた。詳細スペックが分からなかったため270Vぐらいでいいかと適当に購入してきた。本来は電流も気にしないといけないのだが・・・。








本当の原因は
調子がおかしくなって一番最初に対応した160V/470μFの電解コンデンサ交換は、液漏れを起こしていたため確実に対処が必要であり、これは正解だった。次に対応したリレーの交換だが、実はリレーは故障していなかった可能性が高い。トランジスタ交換後にリレーをオリジナルのものに戻してみて動作確認をすればよかったかもだが、せっかく新しいリレーに交換できていることからそのまま継続利用している。残りの電解コンデンサ全交換も故障対応という意味では効果がなかったと思われる。ただ、明らかに製品寿命を超過した利用状況となっているため、これはこれで良しとした。
結果的に2SA798が故障していたということになるが(取り外し後に測定できていないので100%断言はできないが)、故障原因がこのトランジスタではなかったとなると袋小路に入ってしまい自力での解決に至らなかったかもしれない。今回は運がよかった。
修理コスト
前回の修理を含め、今回の一連の修理にかかった費用をまとめてみた。
部品 | 利用箇所 | 数量 | 価格(円) | 購入方法 | コメント |
---|---|---|---|---|---|
電解コンデンサ 160V/470μF | ドライバー回路基板 | 2 | 1,152 | 共立エレショップ(通販) | 2個セット+送料での価格 |
リレー NC2D-DC24V | ドライバー回路基板 | 1 | 768 | モノタロウ | 1,000円クーポン利用。送料込み |
電解コンデンサ一式 | ドライバー回路基板、メーター基板、入力部 | 1式 | 1,458 | 共立エレショップ(通販) | 送料310円込み |
トランジスタ 2SA798 | ドライバー回路基板 | 4 | 2,860 | 若松通商(店舗) | 利用したのは2個。2個は予備 |
その他部品 ヒューズ、電解コンデンサ、バリスタ | ドライバー回路基板、メーター基板、他 | 1式 | 700 | 若松通商(店舗) | 予備部品含む。29円の端数割引!。実際に利用したのは100円以下 |
合計 | 6,938 |
作業しているときは、百円、千円単位での出費のためそれほどコストはかかっていないつもりなのだが、改めて整理してみると7,000円ほどかかっている。予備部品を含んでいるので、実際には5,000円程度で修理完了できていると思う。中古の動作品を購入するにもこの価格ではまず見かけないし、プロに修理を依頼するとおそらく安くても4,5万円ぐらいはかかると思われる。一か八かのトランジスタ交換で復旧できたのは結果オーライ、何度も繰り返しになるが運がよかったと思う。
交換後はもちろん、一度も不具合が発生することなく、心地よいデスクトップミュージックを奏でてくれている。これからも元気よく、よろしくお願いしますね!