サイクロン集塵機(2011年11月)

サイクロン集塵機(2011年11月)

木工作業を屋内で行いたい!

 冬のベランダ木工はとにかく寒い。そして、ベランダは狭い。しかし、集塵さえしっかり工夫すれば、屋内での木工作業が実現できるのではないか、しかも電動工具の騒音を外に撒き散らさなくても良くなる。と考えたのが始まり。

 木くずや汚れた液体などを集塵できる専用の集塵機がリョービやマキタからも2万円程度で発売されている。木工以外では使うものでもないし、家庭にある一般的な掃除機を活用できるのであれば、無駄使いをしなくて済む。しかも、こんなに大きなもの、置く場所もないし。ただし、普通の掃除機を木工で利用すると、木くずがたちまちフィルターに詰まってしまい吸引力が落ちるとともに、フィルターもまめに交換しなくてはならなくなる。木工用の集塵ってどんなものがあるんだろうと、ネットで検索しているところで、サイクロン集塵というものに出会った。

 いつもお世話になっているオフコーポレーションさんでは「Oneida ダスト・デピュティー」というサイクロン部、回収容器、ホースがセットになっているものを扱っているが、15,000円という価格はなぁ、、、。オフさんのWebサイトにも使用例が詳しく記載されており、もちろん集塵としての性能はすばらしい。ネットで検索してみると、皆さんいろんなタイプのサイクロン集塵機を自作しており、うまく機能すれば、数千円でサイクロン集塵機って作れそうな気がしてきた。そこで、近所のホームセンターをいくつか回り、最適な部材検討から始めた。

サイクロンの構造とタイプ

 自作サイクロンを調べてたところ主に下図のような3つのタイプに分類されるようだ。(他にもあるかもしれないが)

サイクロン集塵機の主な種類(勝手に区分を整理)

 【構成1】はカラーコーン(工事現場や道路脇においてある三角錐のあの赤いやつ)を使ったタイプ。前述の「Oneida ダスト・デピュティー」もこのタイプになる。ホームセンターをいくつか回ってみたが最適なカラーコーンが見つからない。またこの構成だとカラーコーンが倒れたりぐらつかないように3,4か所ほど支柱を取り付けたりと更に工夫が必要となる。ちょっと作るのが面倒かなーというところ。

 次に【構成2】のようなタイプ。やはり難しいのはサイクロン部の構成の仕方で、塩ビ管を組み合わせて作るパターン、ブリキ板をカットしてハンダ付けして組み立てるパターン、空調ダクト+異径継手を組み合わせて作るパターンの3つぐらいがあった。塩ビ管は様々なサイズがホームセンターにあったが、あの硬い材料にサイクロン部の吸引用の穴をあけるのは今の自分の所有道具では無理。また、空調ダクトも基本的には”鉄!?”なので穴あけ加工が難しく、半田付け/溶接も現実的ではない、ちょっとハードルが高い。

 最後の【構成3】はペール缶を2段重ねしたもの。これを作るのに必要な鉄のペール缶がとあるホームセンターにあることを確認できた。鉄とはいえ加工できないほどの厚さではなかったため、他になければ「このペール管を買うか」とそのホームセンターを切り上げて、別のホームセンターへ移動したところ、そこにプラスチックのペール缶が販売されていた。しかも少し柔らかめのプラスチック(もちろん、塗料などを保管するものなので強度は十分)なので大きめのカッターでカットできそう。同じ塗料コーナーに内筒のセパレータにもなりそうな小さめの塗料缶もあったので、これと組み合わせればそのままサイクロン集塵機になりそうではないか。その場のひらめきを活かしつつ!?、塩ビ缶のパイプ、集塵ダクトなどを一緒に購入した。

購入した部材たち

 先ほどの【構成3】をベースにもっと簡単に製作する方法を考える。ペール缶の真横に吸引用の穴を開けようとすると、吸引用ダクトの形に合わせて、楕円形のような穴を加工する必要があるのと、吸引ダクトを固定するのがちょっと難しそう。そこで、平らな蓋の部分に穴を開けるともっと簡単に固定できそうな気がした。90度曲がっているパイプで適当なものがないかと探したところ、90度ではないが排水S管(S字に見えるから?)というものを見つけた。これをペール缶の蓋に吸引側として取り付ける構成とする。取り付け方は後述。
 またペール缶を2段重ねにしなくても、作業終了後、こまめに木くずを捨てればペール管1個の大きさでサイクロン集塵機ができそう。最終的に、購入したパーツは以下のとおりで、番号順にどの部分に利用するものなのか簡単にまとめた。

サイクロン集塵機の材料
  • ① ペール管。サイクロン部と木くずの回収部を兼ねる。蓋もプラスチック製だが、柔らかいプラスチックのためカッターで加工がしやすい。
  • ② ちょっと小さめの塗料缶。サイクロン部のセパレータになる。柔らかいので加工がしやすい。
  • ③ 透明アクリル板。サイクロンの機能的には必要ないが、くるくると回って木くずが落ちる様子を見るための窓用。
  • ④ 掃除機とつなぐための部品。洗濯機の排水ホース。
  • ⑤ 塩ビ管。バルブソケットといってネジが切ってある。
  • ⑥ 塩ビ管のエルボ。これもネジが切ってあり、⑤と⑥で②の底とペール缶の蓋を挟んでネジ止め・固定できる。
  • ⑦ 塩ビ管のソケット。これも⑥と同様に内側にネジが切ってある。しかし、結局、これは使わなかった。
  • ⑧ 排水S管。写真のようにS字の形をしており、これをペール管の蓋の部分に取り付ける。
  • ⑨ 排水ホース。トリマーやボール盤での加工時にこれが集塵ホースとなる。
  • ⑩ ②の内筒や⑧のS管を固定するためのボルト、ナット類。

さあ、いよいよ加工の開始だ。

加工、組立

 写真を見ながら順に製作工程がわかるように記載した。

内筒を加工する。最初、黒い線にそってまるごと穴を開け、残りの2cmぐらいの部分をペール缶の蓋に小ボルト/ナットで固定するつもりだった。しかし、円全体をハンドニブラでカットしていくことに挫折し(ただ疲れただけ!)、センター部分のみ穴を開けて、後はそのまま残した状態でペール缶の蓋に固定すればいいじゃない、ということで、こんな中途半端な状態に。
左の写真のままだとちょっとかっこ悪いよね(見えないけど)ということで、不要になったCD-ROMを重ねてこのような形に。結果的に内筒となる塗料缶の端は2mmぐらいの段差ができているのでCD-ROMをここに重ねたことでペール缶の蓋のたわみを抑えることができた。
ペール缶の蓋を加工。センターは掃除機へと排出されていく部分、上側は集塵ダクト(吸入側。インレットというらしい)のS管を取り付ける穴。S管の取付穴は実物をこの位置に置いてみて適当に油性マジックでマーキングして加工した。
このようにボルト/ナットで2ヶ所を固定。どちらもプラスチックなのでドリルで簡単に穴あけができる。S管もがっちり固定できた。
ペール缶の蓋を裏側から見たところ。このダクトから放出された空気が内筒にそってうずを巻くような気流を生み出す。とあるサイトでは、サイクロン部にこのような出っ張りがあると気流が乱れてサイクロンの機能が得られないような記述も見られたが、私の環境においては全く問題なかった。
内筒側に最初に6ヶ所の穴を開けておき、ペール缶蓋と仮組して、ペール缶蓋側に固定用の穴を6ヶ所マーキングする。このように内筒、ペール缶蓋ともに6ヶ所の穴があいたので、その位置にボルト/ナットで固定する。最後に、ダクトや内筒とペール管蓋の接合部分など、隙間が少しでも空いてそうなところをホットボンドで埋めていく。遠慮せずに、たっぷりホットボンドを利用する。

完成、テスト

 いきなりの完成写真。この写真の前に、ペール管蓋へ覗き窓を作り(アクリル板利用)、内筒とペール管蓋をバルブソケット、給水栓エルボ(塩ビ管)で挟みこむようにしてネジ締めしている。
 左側にあるのは吸引テストで利用する紙くず。ちなみに、ペール缶の蓋はペール管に固定できるようになっているが、蓋の一部分が切れるような形で固定されるものらしい。蓋が壊れそうで、さらに何度も蓋をしたり外したりの再利用が必要なため、単純に上から手でぎゅっと押さえるだけにした。これでも、簡単にははずれない。

2メートルの集塵ホースはペール管蓋の吸引ダクトの内径よりわずかに大きいぐらいのサイズだったので、無理やり押し込むだけで普通に引っ張っても抜けないぐらいしっかり固定できた。センターの塩ビ管(エルボ)と掃除機をグリーンの「洗濯機排水ホース差込口」を使って接合する。これもちょっとキツメぐらいの口径だったのでうまく固定できた。もちろん、掃除機は普段は「普通の」掃除機として利用する。
紙くずを吸い取ってみた。写真は吸引時にペール管蓋のアクリル窓から内部を見たもの。写真ではわかりづらいが、紙くずがクルッと回って落ちていく。正確にはあっという間に落ちて、その後、ペール管の底でくるくると回っていた。

実際の木工作業時ではどうなのか

 こんなテスト用の紙くずではなくて、トリマーやボール盤での加工ではもっと細かい木クズや粉塵が発生する。それらはきちんと分離されるのか。掃除機側のフィルターが目詰りすることはないのか。

ボール盤とトリマーを利用時に吸引した木くず。かなり細かいものも含まれている。では、掃除機側のフィルターはどうなっているのか、、、。
かなり汚い写真ですみません。もともと部屋掃除で少しゴミが溜まっていたようです。でも写真のとおり、木くずや粉塵のようなものはほとんど確認できないのではないでしょうか!

サイクロン部のサイズ

 サイクロン部の各パーツのサイズを測っておいた。

ペール缶の直径。約30cm。下に行くほどわずかにテーパーがかかっているので底部分は28~29cmぐらいか。これでもサイクロンとしてちゃんと機能している。
ペール管の深さは約37cm。
こちらは内筒(セパレータ)部分。直径約16cmちょっと。
高さは約21cm。この21cmの部分を使って渦巻きを発生させていることになる。
集塵側ダクトの内径は約44mm。内筒の上部側に位置して、掃除機と接続される部分(塩ビ管)の内径は25mm。ちょうどこの上の写真のセンター部分。サイクロンの詳しい理論値などを考慮したわけではないが、このような適当なパイプの組み合わせであってそれなりに機能してくれた。

 図にするとこんな感じ。サイクロン部(=回収容器なのだが)の円周というか、円形に気流を発生する部分のサイズを比較的大きくできたことが、それなりに安定!?した気流を発生させることに成功しているのではと考えている。もちろん、論理的な裏付けがあるわけでもないが。

今回、製作したサイクロン集塵機のサイズ

その後の使用感

 木くず、少々小さい木片に対する吸引力は素晴らしいものがある。集塵ホースに引っかかりさえしなければ少し重量のあるサイコロ状の木片も簡単に吸いとってくれる。加工内容によっては、板の上下からの集塵を工夫しないと少し取りこぼしが発生してしまうが、細かい粉塵は吸いとってくれている感じだ。ゆくゆくはトリマーテーブルなども製作してテーブルの上下から吸引できるシステムを完成させたい。

このように集塵ホースを通るサイズのものならばガンガン吸い取ってくれる。2cm四方の木片も集塵ホース、セパレータ部分を通る際にカラカラと音を立てながら吸い取ってくれる。こんなにたくさんの量の木片や木くずは家庭用掃除機では吸い取れない。
作業終了後はこのようにペール管の蓋を外して(少し力を入れて引っ張れば外れる)、木くずなどを捨てる。このサイクロン集塵機は水で丸洗いもできる。軽いので持ち運びも楽々。毎回、綺麗な状態から次も気持ちよく利用できる。

いくらかかったのか。製作費用について

 今回の製作費用を最後に。レシートの記載順にまとめたので、最初の写真の丸数字とは順番が異なるのは気にしない。なお、ホットボンドなどの消耗品は含まない。

材料用途数量価格(合計)購入方法コメント
排水ホース 内径38mm集塵ホースになる部分11,160ドイト2メートル
TS給水栓エルボ 25mm掃除機と接続する部分に向けて90度に曲がっている塩ビ管198ドイト30mmとか35mmとかも探したがなかった。ネットでも見つけられなかった。
TSバルブソケット 25mm内筒の上側に位置して上記のエルボとネジで固定するためのもの。148ドイトこちらは30mmとか35mmがあったような気がする。
TS給水栓ソケット 25mm未使用188ドイト念の為に購入したのだが、結局未使用に。
排水S管 内径48mm集塵ダクト1680ドイト意外と高かった。DM44という型番らしい。
洗濯機排水ホース差込口掃除機と接続する部分1248ドイトいい感じの継手がなかったので
M4の少ネジセット内筒や集塵ダクトを固定するためのボルト/ナット2200ドイトM4,M6程度で適当に
塗料缶内筒(セパレータ)1548ドイトアルミで柔らかいがたわむことなどもなかった。BH空缶C-4000SHという型番のようだ
アクリル板(透明)ペール缶蓋に取り付け。内部を確認するための窓1860ドイト使ったのはほんの僅かなんだけど、、、
プラスチック ペール管 専用蓋サイクロン部の上蓋1548ドイトこの蓋が柔らかくて加工しやすくある程度強度もある
プラスチック ペール缶サイクロン部 本体1999ドイトプラタイプはドイトしか売っていなかった。別のホームセンターにあった鉄のタイプは約2000円ぐらいだったような。
合計5,477円

 頑張ればもう少し見栄えの良いものができたような気がするが、サイクロン集塵としての機能は問題ないし、その後の木工作業においても非常に活躍している。今では無くてはならない”相棒”のようなものだ。今回はかなり自己満足でした。

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