木工作業を屋内で行いたい!
冬のベランダ木工はとにかく寒い。そして、ベランダは狭い。しかし、集塵さえしっかり工夫すれば、屋内での木工作業が実現できるのではないか、しかも電動工具の騒音を外に撒き散らさなくても良くなる。と考えたのが始まり。
木くずや汚れた液体などを集塵できる専用の集塵機がリョービやマキタからも2万円程度で発売されている。木工以外では使うものでもないし、家庭にある一般的な掃除機を活用できるのであれば、無駄使いをしなくて済む。しかも、こんなに大きなもの、置く場所もないし。ただし、普通の掃除機を木工で利用すると、木くずがたちまちフィルターに詰まってしまい吸引力が落ちるとともに、フィルターもまめに交換しなくてはならなくなる。木工用の集塵ってどんなものがあるんだろうと、ネットで検索しているところで、サイクロン集塵というものに出会った。
いつもお世話になっているオフコーポレーションさんでは「Oneida ダスト・デピュティー」というサイクロン部、回収容器、ホースがセットになっているものを扱っているが、15,000円という価格はなぁ、、、。オフさんのWebサイトにも使用例が詳しく記載されており、もちろん集塵としての性能はすばらしい。ネットで検索してみると、皆さんいろんなタイプのサイクロン集塵機を自作しており、うまく機能すれば、数千円でサイクロン集塵機って作れそうな気がしてきた。そこで、近所のホームセンターをいくつか回り、最適な部材検討から始めた。
サイクロンの構造とタイプ
自作サイクロンを調べてたところ主に下図のような3つのタイプに分類されるようだ。(他にもあるかもしれないが)
【構成1】はカラーコーン(工事現場や道路脇においてある三角錐のあの赤いやつ)を使ったタイプ。前述の「Oneida ダスト・デピュティー」もこのタイプになる。ホームセンターをいくつか回ってみたが最適なカラーコーンが見つからない。またこの構成だとカラーコーンが倒れたりぐらつかないように3,4か所ほど支柱を取り付けたりと更に工夫が必要となる。ちょっと作るのが面倒かなーというところ。
次に【構成2】のようなタイプ。やはり難しいのはサイクロン部の構成の仕方で、塩ビ管を組み合わせて作るパターン、ブリキ板をカットしてハンダ付けして組み立てるパターン、空調ダクト+異径継手を組み合わせて作るパターンの3つぐらいがあった。塩ビ管は様々なサイズがホームセンターにあったが、あの硬い材料にサイクロン部の吸引用の穴をあけるのは今の自分の所有道具では無理。また、空調ダクトも基本的には”鉄!?”なので穴あけ加工が難しく、半田付け/溶接も現実的ではない、ちょっとハードルが高い。
最後の【構成3】はペール缶を2段重ねしたもの。これを作るのに必要な鉄のペール缶がとあるホームセンターにあることを確認できた。鉄とはいえ加工できないほどの厚さではなかったため、他になければ「このペール管を買うか」とそのホームセンターを切り上げて、別のホームセンターへ移動したところ、そこにプラスチックのペール缶が販売されていた。しかも少し柔らかめのプラスチック(もちろん、塗料などを保管するものなので強度は十分)なので大きめのカッターでカットできそう。同じ塗料コーナーに内筒のセパレータにもなりそうな小さめの塗料缶もあったので、これと組み合わせればそのままサイクロン集塵機になりそうではないか。その場のひらめきを活かしつつ!?、塩ビ缶のパイプ、集塵ダクトなどを一緒に購入した。
購入した部材たち
先ほどの【構成3】をベースにもっと簡単に製作する方法を考える。ペール缶の真横に吸引用の穴を開けようとすると、吸引用ダクトの形に合わせて、楕円形のような穴を加工する必要があるのと、吸引ダクトを固定するのがちょっと難しそう。そこで、平らな蓋の部分に穴を開けるともっと簡単に固定できそうな気がした。90度曲がっているパイプで適当なものがないかと探したところ、90度ではないが排水S管(S字に見えるから?)というものを見つけた。これをペール缶の蓋に吸引側として取り付ける構成とする。取り付け方は後述。
またペール缶を2段重ねにしなくても、作業終了後、こまめに木くずを捨てればペール管1個の大きさでサイクロン集塵機ができそう。最終的に、購入したパーツは以下のとおりで、番号順にどの部分に利用するものなのか簡単にまとめた。
- ① ペール管。サイクロン部と木くずの回収部を兼ねる。蓋もプラスチック製だが、柔らかいプラスチックのためカッターで加工がしやすい。
- ② ちょっと小さめの塗料缶。サイクロン部のセパレータになる。柔らかいので加工がしやすい。
- ③ 透明アクリル板。サイクロンの機能的には必要ないが、くるくると回って木くずが落ちる様子を見るための窓用。
- ④ 掃除機とつなぐための部品。洗濯機の排水ホース。
- ⑤ 塩ビ管。バルブソケットといってネジが切ってある。
- ⑥ 塩ビ管のエルボ。これもネジが切ってあり、⑤と⑥で②の底とペール缶の蓋を挟んでネジ止め・固定できる。
- ⑦ 塩ビ管のソケット。これも⑥と同様に内側にネジが切ってある。しかし、結局、これは使わなかった。
- ⑧ 排水S管。写真のようにS字の形をしており、これをペール管の蓋の部分に取り付ける。
- ⑨ 排水ホース。トリマーやボール盤での加工時にこれが集塵ホースとなる。
- ⑩ ②の内筒や⑧のS管を固定するためのボルト、ナット類。
さあ、いよいよ加工の開始だ。
加工、組立
写真を見ながら順に製作工程がわかるように記載した。
完成、テスト
いきなりの完成写真。この写真の前に、ペール管蓋へ覗き窓を作り(アクリル板利用)、内筒とペール管蓋をバルブソケット、給水栓エルボ(塩ビ管)で挟みこむようにしてネジ締めしている。
左側にあるのは吸引テストで利用する紙くず。ちなみに、ペール缶の蓋はペール管に固定できるようになっているが、蓋の一部分が切れるような形で固定されるものらしい。蓋が壊れそうで、さらに何度も蓋をしたり外したりの再利用が必要なため、単純に上から手でぎゅっと押さえるだけにした。これでも、簡単にははずれない。
実際の木工作業時ではどうなのか
こんなテスト用の紙くずではなくて、トリマーやボール盤での加工ではもっと細かい木クズや粉塵が発生する。それらはきちんと分離されるのか。掃除機側のフィルターが目詰りすることはないのか。
サイクロン部のサイズ
サイクロン部の各パーツのサイズを測っておいた。
図にするとこんな感じ。サイクロン部(=回収容器なのだが)の円周というか、円形に気流を発生する部分のサイズを比較的大きくできたことが、それなりに安定!?した気流を発生させることに成功しているのではと考えている。もちろん、論理的な裏付けがあるわけでもないが。
その後の使用感
木くず、少々小さい木片に対する吸引力は素晴らしいものがある。集塵ホースに引っかかりさえしなければ少し重量のあるサイコロ状の木片も簡単に吸いとってくれる。加工内容によっては、板の上下からの集塵を工夫しないと少し取りこぼしが発生してしまうが、細かい粉塵は吸いとってくれている感じだ。ゆくゆくはトリマーテーブルなども製作してテーブルの上下から吸引できるシステムを完成させたい。
いくらかかったのか。製作費用について
今回の製作費用を最後に。レシートの記載順にまとめたので、最初の写真の丸数字とは順番が異なるのは気にしない。なお、ホットボンドなどの消耗品は含まない。
材料 | 用途 | 数量 | 価格(合計) | 購入方法 | コメント |
---|---|---|---|---|---|
排水ホース 内径38mm | 集塵ホースになる部分 | 1 | 1,160 | ドイト | 2メートル |
TS給水栓エルボ 25mm | 掃除機と接続する部分に向けて90度に曲がっている塩ビ管 | 1 | 98 | ドイト | 30mmとか35mmとかも探したがなかった。ネットでも見つけられなかった。 |
TSバルブソケット 25mm | 内筒の上側に位置して上記のエルボとネジで固定するためのもの。 | 1 | 48 | ドイト | こちらは30mmとか35mmがあったような気がする。 |
TS給水栓ソケット 25mm | 未使用 | 1 | 88 | ドイト | 念の為に購入したのだが、結局未使用に。 |
排水S管 内径48mm | 集塵ダクト | 1 | 680 | ドイト | 意外と高かった。DM44という型番らしい。 |
洗濯機排水ホース差込口 | 掃除機と接続する部分 | 1 | 248 | ドイト | いい感じの継手がなかったので |
M4の少ネジセット | 内筒や集塵ダクトを固定するためのボルト/ナット | 2 | 200 | ドイト | M4,M6程度で適当に |
塗料缶 | 内筒(セパレータ) | 1 | 548 | ドイト | アルミで柔らかいがたわむことなどもなかった。BH空缶C-4000SHという型番のようだ |
アクリル板(透明) | ペール缶蓋に取り付け。内部を確認するための窓 | 1 | 860 | ドイト | 使ったのはほんの僅かなんだけど、、、 |
プラスチック ペール管 専用蓋 | サイクロン部の上蓋 | 1 | 548 | ドイト | この蓋が柔らかくて加工しやすくある程度強度もある |
プラスチック ペール缶 | サイクロン部 本体 | 1 | 999 | ドイト | プラタイプはドイトしか売っていなかった。別のホームセンターにあった鉄のタイプは約2000円ぐらいだったような。 |
合計 | 5,477円 |
頑張ればもう少し見栄えの良いものができたような気がするが、サイクロン集塵としての機能は問題ないし、その後の木工作業においても非常に活躍している。今では無くてはならない”相棒”のようなものだ。今回はかなり自己満足でした。