学習机シリーズ第2弾 ランドセル、書籍、いろいろ収納ラック
学習机とセットで利用する書棚であり、ランドセルなども置くことができるような多機能のラックを製作する。単純な書棚であればさほど悩むことなくできそうなのだが、”机とセットで”というところにこだわって何か工夫してみたい。また子供が小さいうちは棚の上段の方は手が届かなくてうまく活用できないだろうし、かと言って小さいラックだと高学年になった時に収納スペースとして不足が生じてしまう。
そこで子供の成長とともにラックも成長できる構成を考えた。学習机で高さ調整機能を盛り込んでいたため、これと同じ金具を利用すればラックの高さ調整も実現できるという構想だ。
基本構想
前置きはこのくらいにして、どのようなラックを製作したいのか要件を整理する。
- 子供の成長に応じてラック全体の高さを変更でき、収納力をアップできる構成にする。
- ラックの棚板のどちらかが学習机の天板と同じ高さに調整できる。学習机のすぐ横に設置した時に本棚として利用しやすいようにする。
- 可動式棚板の固定時に棚板の前後方向を使い分けることで、ある段は左から、別の段は右からという具合に書籍の出し入れ方向を変えられる構成。そのため、前から見ても後ろから見ても綺麗に仕上げる必要がある。
- ラックの棚板すぐ下に引出しを取り付ける。その引き出しの取り付け位置は棚板とセットで自由に変更できる。
設計図面をおこす前に、これらをイメージ化する。まずは高さが一番低い状態。このとき、ラックの高さは学習机の天板の一番高い位置730mmと同じとなる。教科書のサイズを考えるとグリーンの棚板は利用できず下段側のラックの棚板は一枚少ない状態となる。そのため、グリーンの棚板はどこかで保管しておく必要がある。図では黄色の棚板の位置が学習机の天板と同じ高さに設定されている。ちなみに、この棚板は可動式。
次に、ラック全体の高さが成長したパターン。下段側のピンクの部分は動かないのだが、上段側のブルーの部分がひとかたまりで可動式になっているので、全体の高さがアップする。この例でも黄色の棚板が学習机の天板と同じ高さにセットされている。全体の高さがアップしたことで、下段部分にもスペース的な余裕ができて、グリーンの棚板を活用できるようになる。
なお、いずれの構成でもグレー部分の引出しは右から出し入れするか、左から出し入れするかが選択できるようになっている。この引き出しは棚板/天板のすぐ下にセットできればどの位置に固定されていてもよくて、例えば図中(1)の天板部分直下にもセット出来るようになっている。
詳細設計
先ほどのイメージをもとに詳細設計を行う。高さが低い時、高い時でそれぞれの詳細図面を描き、固定用の金具の位置に間違いはないか、それぞれの棚板・引き出し部分の奥行きに間違いはないかなど確認する。同時に金具固定用の取り付け穴の位置、個数も過不足がないかを、図面中でラックの高さをマウスで移動させて何度も確認する。
材料を調達する
今回もマルトクショップのネット通販にお世話になった。木材はタモ集成材。無垢板で製作したいところだが、無垢板と集成材では価格が倍ぐらい異なる。全体はタモ集成材で製作し、引出しの前板だけタモ無垢板を利用することにした。引出しの前板/側板/向板など引出しのパーツはラジアタパイン集成材を利用する。
加工前の調整ごと・・・。想定外だった作業が。
今回購入した板について残念なところが2つあった。1つ目は、板の切断面に鋸の刃の跡が残っており、これが結構目立っていたこと。機械(テーブルソーとかパネルソーなど)でカットしたときに、その鋸の刃による切れ後が斜めの線となって残っていた。前回の学習机の材料を購入した時もこのような鋸の刃の跡がなかったわけではないが、今回の集成材はかなり目立っていた。このまま使うのもどうにも気になるので、トリマーとストレートジグを使って面取りした。材料のカット寸法は正確に行われていたため当初の設計の250mmよりも約2mmほど板の幅が狭くなって、ラック自体の奥行きも248mmとなった。
2つ目は幕板部分の長さが2mm短かったこと。少し長めに注文しておいて自分でカットする方法にすればよかったのかもしれないが、前回のショップによる正確なカット仕上げのイメージが残っていたのでこのような事態を想定していなかった。これも間に別の板を挟んで全体の長さが長くなるように修正することで対応した。
ひたすら穴あけ
ラックの高さ調整を実現する部分の穴あけを行う。学習机の天板高さ調整サイズと一致させて50mmピッチで穴を開ける。ラックの下段部分と上段部分で重なりあうように連結・固定するため、相当な数量の穴を開けたことになる。
その他加工
このようなラックだと、それぞれの板自体の長さや幅の加工が終わってしまえば、さほど複雑な加工を行う部分は少ない。側板と棚板の組み合わせのところなど加工方法によってはもっとよいやり方があると思うが、間違いなく(失敗することなく)完成できるように複雑な設計を行なっていないこともあって、今回は各パーツの加工にそれほど時間がかからなかった。
塗装
学習机のときと同じオスモカラーのノーマルクリアーを利用した。今回もひたすらオスモブラシでまんべんなく表面、穴の部分に塗る。塗るというより押し付ける。ほぼ半日ぐらい乾燥させた後、厚手のウエス(古くなったチノパンの生地を利用)で強く拭き取る。少々半乾きの状態時にふき取ってもよさそうな感じだ。
鬼目ナットをねじ込む
ラックの上段部分、下段部分はそれぞれ分解できない固定式であるが、その中にセットする棚板は可動式になっている。可動棚板を固定する部分に鬼目ナットを利用する。鬼目ナットはすべてM6/25mmを利用した。
ラックの上下部分の組立て
部品の加工が終わったので組立に入る。ラックの上段部分、下段部分をそれぞれ組み立てる。組立てるといっても、これらは分解出来ないように木ネジでの固定となる。
ラックの上下部分を重ねあわせて連結し、天板を取り付ける
ラックの上下部分がそれぞれ組み立てられたら、それらを連結する。ラック全体の高さが一番低くなる状態に重ねあわせた状態でジョイントコネクターでラックを連結/固定し、ラックの天板をラック上段部分に取り付ける。
ラック部分の完成
上下のラック部分が完成した。
引出しの製作
最初に記載したように今回は引き出しの構造においてちょっといいアイデアを盛り込んでいる。引出し自体は普通の四角の箱。ただ、引出しをラックに取り付ける吊り桟の部分の取付位置を自由に変更できるようにするために、吊り桟自体の取り付け方に少し工夫を施した。
吊り桟の加工
引出しの高さと側板に固定するための取り付け穴の位置関係を考えると、吊り桟の取付位置を吊り桟側板のかなり上側か下側のどちらかにオフセットしないといけなくなる。そうすると、引出し自体の強度や可動じのバランスが確保できなくなる。なんとか、吊り桟を側板の真ん中あたりに位置するように出来ないか考えた。
その後に悲劇が・・・
このままだと引き出しのストッパーがないので、誤って引出しを全部引っ張りだしてしまい、中の収納物が落ちてしまうという恐れがある。これを避けるために、天板、棚板の裏面側に引出しストッパーとなるニッケルダボ(メン)を埋め込んだ(ダボのオンは取り外しできる)。ところが、このダボ(メン)取り付け位置が設計ミスとなっており、なんと、引出しが全部ラック内に収まらないという悲劇が発生。ニッケルダボを再度別の位置に埋め込めば良かったのだが、結局、引出しストッパーがない状態で使ってもらうことになった。
完成後の様子
現在の利用中の様子。ランドセルは天板の上に置かれることを想定していたのだが、子供の身長の関係もありこの位置に収納することになったようだ。天板は飾り棚になっている。ラック下段側の棚板は、図鑑を収納するときに後ろ側の折りたたんだ幕板が邪魔になったため別の場所で保管している。子供の成長とともにこのラックも全体の高さが成長できるので、その時には上段側2段、下段側2段の合計4段構成のマルチラックとなる。
引き出しストッパーは残念な結果になったけど、今のところ引出しを引っ張り出しすぎて、ずるっと落ちてしまうということもないようだ。一安心。一番下の幕板を延長するために間に挟んだ焼き板も良い感じでアクセントになっている。
製作費用は
今回の製作費用のまとめ。木ネジ・丸棒などストックから利用したものや塗料・サンドペーパーなど追加で購入した消耗品・工具などは含まない。
材料 | 用途 | 数量 | 価格(合計) | 購入方法 | コメント |
---|---|---|---|---|---|
タモ集成材、タモ無垢板(引出し前板のみ) | 引出し以外の部分すべて | 一式 | 16,260 | マルトクショップ | キャンペーン期間中で、少し安くなっていた。 |
ラジアタパイン集成材 | 引出し | 1 | 1,080 | ドイト | 全てを引出しに利用したわけではないが。集成材の価格そのまま掲載 |
シナカットベニヤ | 引き出しの底板 | 1 | 328 | 島忠ホームズ | 厚さ4mm |
ウエンジ端材 | 吊り桟用 | 2 | 260 | もくもく | 単価130円。サイズは300*20*6.5mmぐらいだったかな |
鬼目ナットD-M6×L25 | 可動式棚板用 | 8 | 216 | ムラコシオンラインショップ | 単価27円 |
ジョイントコネクター JCB-A-M6×L35 (六角レンチ,ニッケル) | ラック上下部分の連結用 | 8 | 312 | ムラコシオンラインショップ | 単価39円 |
飾りナット JCN-A-M6×L17 (六角レンチ,ニッケル) | ラック上下部分の連結用 | 8 | 360 | ムラコシオンラインショップ | 単価45円 |
合計 | 18,816 |
99%ぐらい集成材を利用したので、トータルコストを抑えることができた。オリジナリティもあって、なかなかいい製品が出来上がったのではと満足している。今後は、天板の取付方法など、「ネジを使いました」というのがわからないような加工技術を磨かないといけないな。