学習机シリーズ第2弾 多機能ラック(2012年5月)

学習机シリーズ第2弾 多機能ラック(2012年5月)

学習机シリーズ第2弾 ランドセル、書籍、いろいろ収納ラック

 学習机とセットで利用する書棚であり、ランドセルなども置くことができるような多機能のラックを製作する。単純な書棚であればさほど悩むことなくできそうなのだが、”机とセットで”というところにこだわって何か工夫してみたい。また子供が小さいうちは棚の上段の方は手が届かなくてうまく活用できないだろうし、かと言って小さいラックだと高学年になった時に収納スペースとして不足が生じてしまう。
 そこで子供の成長とともにラックも成長できる構成を考えた。学習机で高さ調整機能を盛り込んでいたため、これと同じ金具を利用すればラックの高さ調整も実現できるという構想だ。

基本構想

 前置きはこのくらいにして、どのようなラックを製作したいのか要件を整理する。

  • 子供の成長に応じてラック全体の高さを変更でき、収納力をアップできる構成にする。
  • ラックの棚板のどちらかが学習机の天板と同じ高さに調整できる。学習机のすぐ横に設置した時に本棚として利用しやすいようにする。
  • 可動式棚板の固定時に棚板の前後方向を使い分けることで、ある段は左から、別の段は右からという具合に書籍の出し入れ方向を変えられる構成。そのため、前から見ても後ろから見ても綺麗に仕上げる必要がある。
  • ラックの棚板すぐ下に引出しを取り付ける。その引き出しの取り付け位置は棚板とセットで自由に変更できる。

 設計図面をおこす前に、これらをイメージ化する。まずは高さが一番低い状態。このとき、ラックの高さは学習机の天板の一番高い位置730mmと同じとなる。教科書のサイズを考えるとグリーンの棚板は利用できず下段側のラックの棚板は一枚少ない状態となる。そのため、グリーンの棚板はどこかで保管しておく必要がある。図では黄色の棚板の位置が学習机の天板と同じ高さに設定されている。ちなみに、この棚板は可動式。

天板(1)が学習机の最大の高さ730mmと一致する。棚板(2)が学習机の天板と高さを揃えられる。

 次に、ラック全体の高さが成長したパターン。下段側のピンクの部分は動かないのだが、上段側のブルーの部分がひとかたまりで可動式になっているので、全体の高さがアップする。この例でも黄色の棚板が学習机の天板と同じ高さにセットされている。全体の高さがアップしたことで、下段部分にもスペース的な余裕ができて、グリーンの棚板を活用できるようになる。

学習机の天板位置が730mmの高さになった状態。黄色の棚板(前図の(2))が学習机の天板と同じ高さになっている。

 なお、いずれの構成でもグレー部分の引出しは右から出し入れするか、左から出し入れするかが選択できるようになっている。この引き出しは棚板/天板のすぐ下にセットできればどの位置に固定されていてもよくて、例えば図中(1)の天板部分直下にもセット出来るようになっている。

詳細設計

 先ほどのイメージをもとに詳細設計を行う。高さが低い時、高い時でそれぞれの詳細図面を描き、固定用の金具の位置に間違いはないか、それぞれの棚板・引き出し部分の奥行きに間違いはないかなど確認する。同時に金具固定用の取り付け穴の位置、個数も過不足がないかを、図面中でラックの高さをマウスで移動させて何度も確認する。

詳細設計図の完成版。ランドセルのサイズ、教科書のサイズを考慮してなるべく無駄なスペースが生じないように設計する。また、学習机の隣に設置した時に一体感(セット品のような雰囲気)が得られるよう全体のサイズを決める。高さは一番低い状態で730mm、一番高い状態で1180mmとなる。(クリックで拡大)

材料を調達する

 今回もマルトクショップのネット通販にお世話になった。木材はタモ集成材。無垢板で製作したいところだが、無垢板と集成材では価格が倍ぐらい異なる。全体はタモ集成材で製作し、引出しの前板だけタモ無垢板を利用することにした。引出しの前板/側板/向板など引出しのパーツはラジアタパイン集成材を利用する。

加工前の調整ごと・・・。想定外だった作業が。

 今回購入した板について残念なところが2つあった。1つ目は、板の切断面に鋸の刃の跡が残っており、これが結構目立っていたこと。機械(テーブルソーとかパネルソーなど)でカットしたときに、その鋸の刃による切れ後が斜めの線となって残っていた。前回の学習机の材料を購入した時もこのような鋸の刃の跡がなかったわけではないが、今回の集成材はかなり目立っていた。このまま使うのもどうにも気になるので、トリマーとストレートジグを使って面取りした。材料のカット寸法は正確に行われていたため当初の設計の250mmよりも約2mmほど板の幅が狭くなって、ラック自体の奥行きも248mmとなった。

 2つ目は幕板部分の長さが2mm短かったこと。少し長めに注文しておいて自分でカットする方法にすればよかったのかもしれないが、前回のショップによる正確なカット仕上げのイメージが残っていたのでこのような事態を想定していなかった。これも間に別の板を挟んで全体の長さが長くなるように修正することで対応した。

板の断面。今回のカット材料はこのように鋸の刃の後が目立ってしまっていた。サンドペーパーで削って平滑に出来ないほど溝は深く、このまま使うにも気になってしょうがないので、トリマーで面取りすることに。
10mmのストレートビットに合わせて製作したストレートジグを使って面取りを行う。その結果、板の幅(ラックの奥行き)が2mm程度狭くなってラックの奥行きを248mmへ変更した。
面取りした板の様子。ほとんどの板はコーナーにRを付ける加工を行なっている。
ラック前面の幕板の長さが約2mm短かった。そこで、板を真ん中で二等分してそこに焦げ茶色の焼き板を挟み込んで、板の長さを延長する。幕板としての強度を確保するために、見えない部分に当て板をする。同時に、直線を維持するためにクランプで固定するときだけ写真下側部分に当て板を行った。

ひたすら穴あけ

 ラックの高さ調整を実現する部分の穴あけを行う。学習机の天板高さ調整サイズと一致させて50mmピッチで穴を開ける。ラックの下段部分と上段部分で重なりあうように連結・固定するため、相当な数量の穴を開けたことになる。

最初に片面をドリルが貫通しない程度、すなわちドルル先端がわずかに反対側に突き出るぐらいに穴を開ける。全部貫通させてしまうと、バリが発生してしまって作品としてもひどいことになってしまう。
少しだけドリル先端がつきだした状態の板を反転させ、その中心部を狙ってドリルで穴を開ける。この方法によりバリが発生することを防ぐことができる。わずかに中心がそれたとしてもほとんど気にならない程度(利用時に困ることがない程度)に加工することができる。
ジョイントコネクターの皿部分が板の表面から飛び出さないように深さ約2mmの穴を追加で開ける。
可動式の棚板を固定するための穴を開ける。両側を同じ厚さの板で挟んで板自体の厚さを厚くして、ドルルガイドを使って穴を開ける。板を厚くするとドリルガイドが使いやすくなる。
棚板への穴あけ完了後。ここに鬼目ナットをねじ込む。

その他加工

 このようなラックだと、それぞれの板自体の長さや幅の加工が終わってしまえば、さほど複雑な加工を行う部分は少ない。側板と棚板の組み合わせのところなど加工方法によってはもっとよいやり方があると思うが、間違いなく(失敗することなく)完成できるように複雑な設計を行なっていないこともあって、今回は各パーツの加工にそれほど時間がかからなかった。

底板に幕板を取り付け。この2つの板は、取り外す(分離させる)こともないため、接着剤(タイトボンド3)を利用して固定する。接着剤で固定できたら、木ネジ+丸棒で固定する。
ラック下段側に取り付ける拡張用の棚板。この棚板を使わないときは棚板奥側に位置する向板を折りたたんで、ラック一番下側に収納できるように蝶番で2枚の板を固定する。

塗装

 学習机のときと同じオスモカラーのノーマルクリアーを利用した。今回もひたすらオスモブラシでまんべんなく表面、穴の部分に塗る。塗るというより押し付ける。ほぼ半日ぐらい乾燥させた後、厚手のウエス(古くなったチノパンの生地を利用)で強く拭き取る。少々半乾きの状態時にふき取ってもよさそうな感じだ。

学習机と同じオスモカラー/ノーマルクリアーを利用
ほぼ半日後(一晩乾燥させたぐらい)、少し固めのウエス(古いチノパン生地)でこすることで表面の毛羽立ちも取り去ることができ、良い感じの艶が得られるようになる。

鬼目ナットをねじ込む

 ラックの上段部分、下段部分はそれぞれ分解できない固定式であるが、その中にセットする棚板は可動式になっている。可動棚板を固定する部分に鬼目ナットを利用する。鬼目ナットはすべてM6/25mmを利用した。

この鬼目ナットを可動式の棚板2枚にねじ込む。
下段側部分の棚板は、ラック全体の高さが高くなった場合に利用する。すなわち、ラックの高さが低い場合は棚板として機能しない。そのため、後ろ側の向板を折りたたみ式にすることで、この棚板を利用しないときはラックの最下部に収納できるようになる。

ラックの上下部分の組立て

 部品の加工が終わったので組立に入る。ラックの上段部分、下段部分をそれぞれ組み立てる。組立てるといっても、これらは分解出来ないように木ネジでの固定となる。

ラック下段部分の組立の様子。幕板と一番下の棚板を側板と固定する。まず、後ろ側をクランプで固定して前側を木ネジで留める。その後、前側をクランプで固定して後ろ側を木ネジで留める。
棚板と側板の直角が確保されているかは左右とも入念にチェックする。最終的にはクランプの締める/広げるで調整する。
木ネジで3箇所を固定した様子。丸棒にコクタンを利用することで、タモとは明確に異なる色合いを出すことができアクセントにもなる。本当は見えないほうがかっこいいのだけど。
ラック上段部分の組立。こちらは後ろ側に幕板が取り付けられている。下段部分と同様に、左右の直角の確保に注意する。

ラックの上下部分を重ねあわせて連結し、天板を取り付ける

 ラックの上下部分がそれぞれ組み立てられたら、それらを連結する。ラック全体の高さが一番低くなる状態に重ねあわせた状態でジョイントコネクターでラックを連結/固定し、ラックの天板をラック上段部分に取り付ける。

ラックの上下部分をラック全体の高さが一番低くなる位置で重ね合わせる。天板は高さを揃えるために仮置きしている状態。ラックの上下部分が離れないように、ジョイントコネクター/飾りナットで連結する。
ラックを立てて天板取付けを行う。天板位置がずれないようにクランプで固定する。天板と側板は左右それぞれ4ヵ所を木ネジで固定した。ネジ埋め込みの穴は側板同様、コクタンの丸棒を利用して表面を整える。ネジが見えないような組み付け方法ができるようになるといいんだけど。

ラック部分の完成

 上下のラック部分が完成した。

ラックの各パーツが完成。この写真以上には分解することが出来ない。これらを組み合わせてラックとしての形になっていく。
ジョイントコネクター、飾りナットを利用してラック上下を固定する。上下の穴の位置さえ合わせれば、50mmピッチでラック全体の高さを変更できる。棚板も穴の位置を自由に選択することで高さ調整が可能になる。
組み立てるとこんな感じに。これは最も高さが低い状態。天板の高さは学習机の天板が一番高い位置(高さ730mm)と同じ高さになっている。一番下側には下段側で利用する棚板を収納している。
ラック後ろ側。このラックを壁にくっつけるように設置した場合でも壁の幕板の厚さを考慮して壁にぴったりくっつくように設計していたつもりだが、面取りでラックの奥行きが2mm短くなったことを考慮せずに組み立ててしまったため、このように後ろ側の幕板が少々飛び出してしまった。実用上はまったく問題ないのだが。

引出しの製作

 最初に記載したように今回は引き出しの構造においてちょっといいアイデアを盛り込んでいる。引出し自体は普通の四角の箱。ただ、引出しをラックに取り付ける吊り桟の部分の取付位置を自由に変更できるようにするために、吊り桟自体の取り付け方に少し工夫を施した。

引出しの前板/側板/向板すべてに4.1mmぐらいの幅で底板をはめ込む溝をトリマーで予め加工しておく。4mmのストレートビットで1回だけの加工だと、4mmのシナベニヤ底板がきつくて入らない。なので、ほんの僅かだけ広がるように2回加工にしている。その後、同じ長さの板どうしは重ねあわせてカットする。
なんちゃってあられ組み付けになるようにカットする。組み付けた時の隙間が少しでも小さくなるように、刃厚の薄い鋸でカットする。ソーガイドが使えないので直角の精度を出すのが難しいため、当て板を使ってカットした。
引出しを引っ張り出しやすくするため、前板に手を引っ掛ける部分を作る。内側の前板と外側の前板を重ねあわせて、およそその中心部に、U溝ビットを使って手を引っ掛ける溝を作る。10mmのU溝ビットを使って幅が15mmぐらいになるように、何度かトリマーで調整する。
引出しを構成するパーツが完成したので並べてみた。こうやって見ると、全然あられ組付けになっていない・・・・。ちなみに、黒い約20mm幅の板が吊り桟となるパーツで、ウエンジという木材を利用した。この吊り桟部分が引出し側板の外側にはまるようにあらかじめ側板にストレートビットを使って削っておく。
仮組みしてみた。このように、吊り桟構造になっていることがよく分かるショット。
引出しが完成。左右の吊り桟部分を合わせたりしながら、前板が引出しのセンターの位置になるように慎重に取り付ける。ラック側板との隙間は設計上1.5mm程度しか確保していないため、前板固定位置がずれると引出しの動きがスムーズにできなくなるし、見た目も悪くなる。作業に意外と手間がかかる部分だ。底板はシナベニヤを利用。節がなくて木目が綺麗なものをホームセンターで選んだ。

吊り桟の加工

 引出しの高さと側板に固定するための取り付け穴の位置関係を考えると、吊り桟の取付位置を吊り桟側板のかなり上側か下側のどちらかにオフセットしないといけなくなる。そうすると、引出し自体の強度や可動じのバランスが確保できなくなる。なんとか、吊り桟を側板の真ん中あたりに位置するように出来ないか考えた。

最初から取り付け用の飾りナットをはめ込んでしまうことにしたので、吊り桟側にナット締め付け時に利用する六角レンチより少し大きめの穴を開けておく。いざ、取付となった時に六角レンチが入らないということが発生しないように、位置合わせは慎重に行う。吊り桟のウエンジ材は幅が狭く無理やり木ネジをねじ込むと割れてしまうため、木ネジより少し大きめの下穴を開けておく。さらに吊り桟には引出し側板と木ネジがぶつからないように、皿ネジ用の穴を加工しておく。
吊り桟側(ウエンジ材)の加工が終わったら、このように正確に位置合わせを行いクランプで固定する。その後、木ネジで4ヶ所締め付けて、吊り桟部分のパーツが完成する。このとき、飾りナットをはめ込むのを忘れないように!
吊り桟をラック上段に取り付ける。上段側のラックであれば、天板の下、可動式の棚板の下、どちらにも取り付けができる。
引出しを取り付けたところ(矢印部分)。

その後に悲劇が・・・

 このままだと引き出しのストッパーがないので、誤って引出しを全部引っ張りだしてしまい、中の収納物が落ちてしまうという恐れがある。これを避けるために、天板、棚板の裏面側に引出しストッパーとなるニッケルダボ(メン)を埋め込んだ(ダボのオンは取り外しできる)。ところが、このダボ(メン)取り付け位置が設計ミスとなっており、なんと、引出しが全部ラック内に収まらないという悲劇が発生。ニッケルダボを再度別の位置に埋め込めば良かったのだが、結局、引出しストッパーがない状態で使ってもらうことになった。

天板、可動式棚板の裏側に引き出しストッパーとなるニッケルダボ(メン)を埋め込む。ここまでは順調だったのだが・・・。
なんと、ニッケルダボの位置がフロント側により過ぎていて、引出しの前板があたってしまい完全に格納できない状態になってしまった。あと、5mmぐらい奥に取り付けられていれば、、、。再度別の場所に埋め込むか、ストッパー無しで利用のどちらかなのだが、ダボ埋め込み時のハンマー音が響くこともあってとりあえずストッパー無しで利用することに。

完成後の様子

 現在の利用中の様子。ランドセルは天板の上に置かれることを想定していたのだが、子供の身長の関係もありこの位置に収納することになったようだ。天板は飾り棚になっている。ラック下段側の棚板は、図鑑を収納するときに後ろ側の折りたたんだ幕板が邪魔になったため別の場所で保管している。子供の成長とともにこのラックも全体の高さが成長できるので、その時には上段側2段、下段側2段の合計4段構成のマルチラックとなる。

こんな感じで使っています。

 引き出しストッパーは残念な結果になったけど、今のところ引出しを引っ張り出しすぎて、ずるっと落ちてしまうということもないようだ。一安心。一番下の幕板を延長するために間に挟んだ焼き板も良い感じでアクセントになっている。

製作費用は

 今回の製作費用のまとめ。木ネジ・丸棒などストックから利用したものや塗料・サンドペーパーなど追加で購入した消耗品・工具などは含まない。

材料用途数量価格(合計)購入方法コメント
タモ集成材、タモ無垢板(引出し前板のみ)引出し以外の部分すべて一式16,260マルトクショップキャンペーン期間中で、少し安くなっていた。
ラジアタパイン集成材引出し11,080ドイト全てを引出しに利用したわけではないが。集成材の価格そのまま掲載
シナカットベニヤ引き出しの底板1328島忠ホームズ厚さ4mm
ウエンジ端材吊り桟用2260もくもく単価130円。サイズは300*20*6.5mmぐらいだったかな
鬼目ナットD-M6×L25可動式棚板用8216ムラコシオンラインショップ単価27円
ジョイントコネクター JCB-A-M6×L35 (六角レンチ,ニッケル)ラック上下部分の連結用8312ムラコシオンラインショップ単価39円
飾りナット JCN-A-M6×L17 (六角レンチ,ニッケル)ラック上下部分の連結用8360ムラコシオンラインショップ単価45円
合計18,816

 99%ぐらい集成材を利用したので、トータルコストを抑えることができた。オリジナリティもあって、なかなかいい製品が出来上がったのではと満足している。今後は、天板の取付方法など、「ネジを使いました」というのがわからないような加工技術を磨かないといけないな。

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