構想・設計に悩み迷い、ようやく完成
いきなり完成写真から。今回はこれを製作しました。
木工作業がだんだん本格的になりいろいろな加工方法に取り組むようになると、ワークベンチ(作業台)があれば、作業がどんなに楽でしかも効率よく作業できるんだろうな!と思うようになる。今でもたまにベランダで作業するときに折りたたみ式の作業台を利用するが、安定性も悪いし作業テーブル部分も狭いので仕上がり時の精度を追求するような作業では利用しなくなった。夏は暑くて木工作業をなかなかする気にならないので秋冬が木工シーズン!?になるのだが、冬は寒いためベランダで作業をあまりやりたくないという理由もあってこの作業台の登場回数は減っている。
屋内での木工作業時に活躍しているのがIKEAで購入した踏み台だ。これをもっぱら作業台代わりに利用しているのだが、高さも低いし作業テーブルとしてもかなり小さいため、作業性が良くないばかりか数時間作業しただけで腰が痛くなる。木工作業した日の夕方のランニングは相当腰が痛くて辛い。
「いつかは作業台」と思って設計を始めたのが2012年の1月。途中、いろんな要件追加や変更が度々発生して設計を確定できずにズルズルと時は流れ、ようやく2013年の12月(年末休みから)になって製作作業に着手となった。
設計が確定するまでの迷い道
これまでに検討してきた図面ファイルの日付を確認すると、設計確定まで2年間かかっている。何をそんなに悩んで迷っていたのかをまとめてみた。
- 作業台の下側にツールなどを収納するキャビネットを付けるか、付けないか
- 作業台自体の材料として重厚なタモやゴム材を利用するか、安価に済ませるため2×4材で済ませるか
- 大きさをどの程度にするか。小さくぎても不便だし、大きすぎると作業台を置く場所に苦労する
- 天板をスライドさせたり、折りたたんだりする機構を盛り込むことで作業台のサイズを可変式にできないか
- トリマーやルーターを利用するため、トリマースタンドまたはルータースタンド兼用に出来ないか
- 作業台を移動させるためにはキャスターが必要だが、作業時には動かないように床にベタ置きにするための機構をどう実現するか
- 収納部分の引出しにスライドレールを使うか、使わないか。スライドレールを使うとレール自身で重量がかさんでしまう
- 収納部分の引出しのサイズ設定。特に高さ部分を何mmにするか。作業台の高さは830-850mm程度を想定
- バイスは絶対付けたい。専用の木工バイスを取り付けるか、パイプクランプをバイス代わりに利用するか
- 天板の取り付け方。天板を外枠で囲むようにするか、天板をフレームに載せるだけにするか
- 作業台自体の形。一般的?な机のように立方体に近い形にするか、ヨーロピアンワークベンチのようなスタイルにするか
- 作業台自体を組み立て式にするか、固定式にするか
- 作業台のフレーム部分になる材料の大きさ(断面)をどのようなサイズにするか。強度は大丈夫か
などなど、細かい部分も入れると、上記に書ききれないほど悩みが発生してはループ状態に陥り、描いたVisioの設計ファイルも62個ほどになってしまった。途中でタモやゴムの集成材を利用した時のコストなども計算したが高コストになってしまうため、最終的にはコスト優先で2×4材を利用した設計で無理やり確定させた。どうせ作業台だし、利用しているうちにキズも付いてくるので2×4材でよしとした。2×4をベースとした設計になるため、89*38mmの材料を組み合わせた設計となっている(一部で2×3なども利用している)。
確定した設計図
最終的には以下の様な設計となった。記入している数値など細かくて見えないと思うが、雰囲気だけでも。
先ほどの悩んだ部分がすべて実現出来ているわけではないが、主な特徴としては以下の様な感じになる。
- 天板は取り外し可能となっていて、天板を外せばルータテーブルトップを載せることができる。
- キャビネットは高さ30mmと50mmの2種類をそれぞれ3段ずつ確保。引出しも超簡易な構成。
- 電動工具などの重量物を格納するためのスペースを一番下に確保。ルータが入るぐらいの高さにしている。
- キャスター部分は90度回転できるようになっていて、作業するときはキャスターを格納して作業台を床にベタ置きできる。
- バイスはパイプクランプで実現。500mm長のパイプを利用しているため、開き幅は300mm程度まで対応。
- ルータテーブルトップを利用しない時は、ワークベンチサイドに立てかけられる。倒れないようにベルトで固定。
- 組み立て式。天板部分、脚部分、その他に分解できる。
- 大きさは屋内利用を考慮し天板を900*450mmに設定。キャビネットは600*450mmのMDFやベニヤを活用できるサイズに設定。
製作途中の写真に上記の特徴に対するコメントも盛り込みながら、製作工程をまとめてみた。
脚部の製作
まずは脚部の製作から着手した。
天板を載せるフレーム部分の製作
加工時間の短縮や楽に作業できることを求めて単純に打附け接ぎにすることも考えていたのだが、完成後に利用しているうちに縦横のフレーム部分がずれてきたり強度が足りなくなったりするのではというのが心配だったので、ここはちょっと頑張って両端を三枚組接ぎ、真ん中をホゾ接ぎとした。
バイス用パイプクランプの取り付け部分の加工
このワークベンチのバイスは専用の木工用バイスではなくて、パイプクランプをバイスとして利用することにした。木工用バイスだと開き幅が狭かったり、ジョーのサイズが小さかったりするし、コストも小型の安いものでも1万円程度かかってしまう。また、何よりパイプクランプであれば、作業台から取り外すことで普通の”クランプ”としても利用できる。ただ、後から考えるとパイプ(ガス管)まで含めた費用計算ではさほど差がなくなっていたので、それほどコストメリットはなかった。残念。
(最後に掲載している”製作コスト”のところで確認できる)
その他の加工
接着剤で組み立てた後に難しい方向での穴あけやカットが発生してしまうと大変なので、予め必要な部分の作業をガンガン済ませておく。
天板フレーム部分の組み立て(固定)
天板を載せるフレーム部分と脚部は長さ150mmのM8ボルトで固定することになるが、天板フレームと脚が接する部分に隙間がありすぎるとフレームがきしんだり、安定性にかけることになる。先ほど仮組みでサイズ確認は行っているが、再度仮組みして完成後と同様の状態にしてから接着剤、木ネジで天板フレームを完成させる。
塗装
作業台なので、塗装いらない??とも途中で思ったが、せっかく綺麗に製作している途中なので、作業台とはいえオスモカラーノーマルクリアで塗装した。ちょっと贅沢かな。ただし、SPF材の部分と引出しの前板・向板部分だけ。MDFボードは塗装していない。組み立ててから塗装だと塗れない部分も発生するため、それぞれのパーツの加工が終わってから最終組立直前に塗装している。
作業台のフレーム(骨格部分)の組み立て
塗装も終わり、組立後に再度分解して加工するような行程もなくなったことから、いよいよ組み立てを行う。
バイス部分の製作
パイプクランプをバイス代わりに利用するのだが、今回利用したパイプクランプはIRWINの”224134 Quick-Grip 3/4-Inch Pipe Clam”というやつで、アメリカ・ダイレクトで購入した。パイプクランプといえば”ポニークランプ”が有名で、国内でもオフ・コーポレイションなどの通販で購入できる。なぜ、ポニーにしなかったかというと、このIRWINのクランプのいいところは、クランプの先端取り付け部分にネジきりがされていなくてもクランプを固定できることだ。そのため、いつでも付けたり外したりが簡単にできるので、ワークベンチを収納するときにクランプが邪魔になる場合はこれを外しておき、ワークベンチを利用するときにクランプを再度取り付けるという利用方法ができるからだ。個人的にもブルーの色合いが気に入っている。
キャスター部分の取り付け。ちょっとした機構を取り入れた。
これもそれなりに悩んだ部分だ。部屋が広かったり、作業場が固定されて確保できれば問題ないが、そんな立派な住環境ではないため作業台の設置場所が可動であることは必須の条件なので、必然とキャスターを取り付けるか、移動用の台車が必要となる。台車方式はワークベンチがそれなりの重量になってしまうため、台車に乗せたり降ろしたりが現実的に出来ない。で、キャスター方式になるのだが、キャスターだと力作業時にワークベンチが揺れたり動いたりする恐れがある。ストッパーがついていても多少なりグラグラするはずだし、下方向に力をかけるような作業ができない。ワークベンチと床の間にダミーの板を挟んでキャスターを浮かせて利用するというのも考えた。
結局、ワークベンチを移動させるときはキャスターが出てきて、作業をするときはキャスターが引っ込むようなスマート!?な機構を実現した。キャスターの耐荷重、取り付け高さ、またキャスターを格納するときの必要な空間を考慮してワークベンチの脚の構成も設計している。
キャビネットの製作
そもそもワークベンチにキャビネットは必要か?で相当悩んで何度も設計変更を行った部分。ワークベンチ下に空間が出来てしまうのがなんとなくもったいなくて、結局キャビネット付きのワークベンチになった。
引出しには利便性を考慮してフルオープンのスライドレールを利用することも検討した。400mmのフルオープンスライドレールが過去の製作物の計画変更のため5セットほど余っておりこれを活用する案もあったが、スライドレール自体の自重がそれなりにありワークベンチの重量がスライドレールのために重くなることを避けたいことと、キャビネット製作を簡単に済ませたいためスライドレール案は無しとなった。
いろいろな引出しの構成を考えたが、結局、引出しというよりはトレイのようなものすごく簡単な構成で落ち着いた。ちょっとサボりすぎたかも。
バイス部分の製作(2)
バイスのジョー部分(保護板)として注文していたタモ集成材が届いたのでバイスを仕上げる。
ワークベンチ完成!
完成後の様子を写真とともに。
いくらかかったのか。製作費用について
今回の製作費用はいかに。購入時のレシートを確認しながらまとめているが、ボルト/ナットなどの金具類で購入したものの、いくつか利用しなかったものがあるため数百円程度の誤差はありそう。
材料 | 用途 | 数量 | 価格(合計) | 購入方法 | コメント |
---|---|---|---|---|---|
SPF 2×4材 1820mm | ワークベンチのフレーム部分。主に脚部、天板フレーム | 5 | 1,490 | ドイト | 1820mmで単価298円という格安材。ただし、材料は節あり、曲がった物ありで販売されているので、木材を選択するときは注意深く見て、綺麗に揃っているものを購入する。 |
SPF 2×3材 910mm | ワークベンチのフレーム部分。主に脚部の台座部分や横方向の貫に当たる部分等 | 6 | 2,088 | 島忠ホームズ | 1820mmを購入してカットすればもっと安価だったのだが、なぜか910mmを購入してしまった。店内のカットコーナーまで運びやすかったというのが理由なんだろうけど、自分でも今もって不思議。ちょっともったいない。 |
SPF 1×4材 1820mm | 一番下側に位置する電動工具収納棚 | 1 | 198 | ドイト | 1820mmで198円と超安価。 |
ラジアタパイン集成材 18*450*910mm | キャビネット部分の側板 | 1 | 2,680 | ドイト | ホームセンターで長さ450mmずつにカットしてもらってキャビネットの左右の側板とする。 |
ラジアタパイン集成材 18*450*600mm | キャビネット部分の引出し前板・向板 | 1 | 1,780 | ドイト | ホームセンターで幅30mmずつにカットしてもらってキャビネットの前板・向板として利用。理想的な多さの板がないときは、集成材をこのようにカットすることで細長い板としても利用できる。 |
MDFボード 18*450*910mm | 天板 | 1 | 888 | 島忠ホームズ | 販売されているサイズは「約」の表記であることに注意。幅は450mmだが長さは907mmぐらいしかない。これを長さ900mmにカットしてもらう。また、厚さ15mmのものを購入したつもりだったのだが、バイスを製作するときに実は18mmを購入していることに気づく。慌ててバイス部分の設計を少し変更。危ない危ない。 |
MDFボード 9*450*600mm | キャビネット部分の天板 | 1 | 398 | 島忠ホームズ | 表記サイズどおりなのでカットせずにそのまま利用 |
MDFボード 5.5*450*600mm | キャビネット部分の引出し底板 | 6 | 1,308 | 島忠ホームズ | 1枚あたり218円。こちらも表記サイズどおりなのでカットせずにそのまま利用 |
タモ集成材 30*120*450mm | バイスのジョー部分(保護板にもなる) | 2 | 1,340 | マルトクショップ | 送料がかかっているが、別で利用する板と合わせて購入しているので送料分は考慮せず |
ハンマーキャスター 420GR75 | ワークベンチを動かすためのキャスター | 2 | 1,280 | ドイト | ストッパー無しタイプ。1個640円 |
ハンマーキャスター 420GR75 | ワークベンチを動かすためのキャスター | 2 | 2,000 | ドイト | こちらはストッパー有りタイプ。1個1000円。普段、使わない時に動かないようにするためにストッパー付きを2個取り付けたが、ワークベンチは重量もあり簡単には動かないことからストッパーは不要だったかも。 |
蝶番 | キャスター部分を出したり格納したりする機構を実現する部分 | 2 | 556 | ドイト | 1袋2個入りで278円。それを2つ購入し、合計4ヶ所で利用 |
ガス管(3/4インチ) | パイプクランプを利用したバイス部分 | 2 | 2,160 | ドイト | 長さ500mm。単価1080円。意外と高かった。 |
ナイロンベルト、バックル | ルーターテーブルトップ固定用 | 1式 | 675 | ドイト | ベルトの長さは1500mm。バックル等の小物を含めた一式の価格。 |
極低頭タッピング | 引出し底板に前板(向板)を取り付けるときに利用 | 1 | 549 | ドイト | 1箱に入っていた48本、全て利用 |
M8の長ボルト、ナット、スプリングワッシャー、丸座金等の金具類 | ワークベンチ組み立て用 | 1式 | 3,597 | ドイト | 1個あたり5円程度から120円のものまで、単価は安いが数量がかさんでこの値段になってしまった |
IRWIN パイプクランプ | バイス部分 | 2 | 7,309 | アメリカ・ダイレクト(個人輸入) | パイプクランプの単価は2434円なので2個で4868円。送料が2441円で合計7309円。ガス管が約2000円したことを考慮すると、もう少し頑張ればクイックリリース機能付きの木工用バイスが購入できるではないか。ちょっと微妙な価格だったかも。 |
工作料 | 木材のカット料金 | 合計3回利用 | 1,360 | ドイト、島忠ホームでの合計額 | |
合計 | 31,656 |
ワークベンチ本体は2×4材、2×3材を多用したためそれなりに安価に製作出来ていると思うが、キャスターやガス管、パイプクランプなど機能を充実させるための部分でちょっと費用がかかりすぎてしまった。収納部分などにこだわらずに作業するための「台」に特化すればもっと安価に製作できると思うので、2×4材を活用すれば5000円もかけずにワークベンチを製作することができると思う。
収納付きにしたことでほとんどの作業にこれ1台で対応できることを考えると、今後の作業効率アップも期待できそうだ。しかも作業後に腰も痛くならないで済むかもね。