自転車置き場の屋根(2016年10月)

自転車置き場の屋根(2016年10月)

家とセットで考えておかないといけない・・・

我が家は、いわゆる狭小地になるのだが、建築においては家本体のことばかりに集中してしまい、家族4人分の自転車置き場のことはあまり考慮しないまま、家が完成してしまった。かろうじて、建蔽率の関係で自転車4台を置けそうなスペースは残されたものの、出し入れの不便さや、屋根がないことによって自転車への錆の懸念が残ったりと、安心して自転車を維持できる状態にはなっていなかった。

スペースの問題は今更どうしようもないため、自転車が痛むことがないように屋根だけはきちんと設置したいと思い、工務店に頼らずに自転車置き場を自作で完成させた。本来は設計・建築過程において「自転車4台を置くスペースどうしますか?」という提案があってもよかったのだが、他責にするわけにもいかず・・・。

あれだけ工務店には言っておいたのに・・・

自転車置き場となるスペースなのだが、下図の赤枠の部分、縦方向に約3.6m、横方向(最大部)に約1.6m程度が公道に面しているところに残されており、このスペースが自転車置き場となる。家族4人分、4台の自転車を置くことになるのだが、このスペースだと4人が自由に自転車を出し入れすることはできない。奥に設置された自転車を出すためには、手前側の3台の自転車をいったん出してから一番奥の自転車を出す必要があり、利便性は良くない。とはいえ、この場所を利用するしかないため、自転車をきれいに維持することを目的に、風雨から守るための設備を考えることになる。

このスペースを自転車置き場にすること、屋根も自分で作ることは家引渡し前から工務店には伝えており、「柱脚金具は後から取り付けるのが難しいから、コンクリートを張るときにセットで考えておきましょう」と工務店側とも調整していた。しかしながら、こちらの要望や事前調整の事実は全くお構いなしで、いつの間にかコンクリートが張られてしまっており、これまでのお互いの調整は何だったの?状態に。この工務店はこういうところが多く、「柱脚金具の件はどうなったのか?」とクレームを入れることさえ無駄に思えたため、自力で解決るすることにした。小さな工務店のため、プロジェクトマネジメント的な育成や訓練は行っていないとは思うが、あまりにもtodo管理のようなところさえお粗末なところが多すぎたため、引き渡し時のミーティングでも工務店側に改善要望として伝えたのだが、今はどうなっているのかわからない。

赤枠内が自転車置き場となる。グリーン線のような感じで自転車4台を格納する。青矢印部分が公道に面しているところで、自転車はこの面からのみ出し入れを行う。そのため、一番奥に設置されている自転車を出すときは、手前側3台を道路に出してから取り出すという手間のかかる使い方となる。

設計

というわけで、自転車置き場をゼロから自分で作っていくことになるのだが、単に屋根を作るだけでは意味がない。風雨は横方向から入ってくることが多く、屋根があるだけでは風雨に対しては効果が少なく自転車が雨でずぶ濡れになってしまう。そのため自転車には錆が発生する。自転車置き場としては、屋根だけでなく、横の壁もあわせて両方を考慮した設計を行う必要がある。

また、屋外設置ということで、柱・垂木等の位置取りだけでなく、台風や強風に耐えられる構造にしなければならない。構造設計などはもちろん理解しようもないのだが、どんな強風が吹いても、屋根張り時に人が乗っても壊れないような丈夫な設計を素人考えなりに追求した。

全体の設計図。左側が上から見た図、右側は側面から見た図。(クリックで拡大)
上から見た部分の拡大図。四角形ではないため、垂木をどのように設置するかに悩み、いったんは上図のようなA/B/C/Dの4本構成で設計した。完成後は全然違う形になっている。(クリックで拡大)
横からの風雨を防ぐためのフェンス部分の設計。隣接地の駐車場にはブロック塀があるため、それよりも高い部分からの雨の入り込みを防ぐために、板8枚によるフェンス構成とした。(クリックで拡大)
柱脚金具の位置取り。これが最も苦労した部分。自転車置き場スペースと隣接地にはもともとコンクリートブロックが設置されておりこの上に柱を設置することで、狭小スペースを最大限に活用できる。ただ、ブロックの高さが一様ではないため、柱の高さ・接地面の高低差を吸収するようにボルト取り付け部を微調整しながら位置取りを確定させた。同じ高さの柱4本ではNGということ。
柱脚金具に利用したL型金具。本来の使い方とは異なると思うが、この金具を使うパターンが素人としては最も楽に思えた。これに決めるまでに、複数のホームセンターの金具コーナーを回った。右のアンカーをコンクリートに埋め込んで固定する。工務店が柱脚金具を考慮してくれていれば、こんな苦労もなくしっかりしたものができただろうに・・・。
利用した雨どい。パナソニックの「アイアン角」の小型タイプ。ホームセンターにある雨どいは丸型だったり、サイズも大きかったりして、狭小自転車置き場にはふさわしくないものばかりだった。ネットで調べたところ、小型の角型が見つかったため、これを採用。
雨どいの部品。これらを無駄にならないように組み合わせて発注する。

製作工程

屋外の炎天下での作業ということもあったのだが、製作途中の写真を撮ることをすっかり忘れてしまっていた。そのため、いきなりになるのがだが途中まで組みあ上がった写真、完成後の写真の2パターンしか掲載できなくなってしまった。

今回利用した木材は、代表的なハードウッドであるイペ。住宅のウッドデッキのみならず、公園や桟橋などのデッキ材としても利用されており、耐久性も非常に高くハードウッドの王様ともいえる木材のようだ。その耐久性からか、木材はとても硬く、価格も高い。少しでも長い年月を外で耐えてほしいため今回はすべての木材にこのイペを利用した。一般的なホームセンターでは取り扱っていない木材のため、木工ランドの通販を利用した。

このイペだが想像以上に硬い硬い。すべて鋸&手作業でカットしたのだが、非常に硬くてSPF材や集成材のように簡単にはカットできなかった。ひたすら鋸を前後に動かすだけ。また、フェンスを取り付けるときのデッキビスも下穴無しではとても取り付けられず、その下穴を空けるためのドリルビットも数本が折れたりするなど、二度と使いたくない、と思わせるような「ハード」なウッドだった。さすがイペ・・・。

いきなりだが、組み上がった全景。屋根はまだないが、木材を利用した構造材としてはこれが完成状態となる(クリックで拡大)
真ん中の柱と、一番奥の柱部分。フェンス材以外は、M10のボルト固定とした。写真真ん中あたりに見える穴の開いた部材は、何かを吊るしたりするときに便利だろうと取り付けてみた。(クリックで拡大)
真ん中から奥のほうをさらに拡大。90mmの柱を挟むように母屋にあたる木材をボルトで固定。(クリックで拡大)
垂木は設計図とは異なり、このように一番奥をスタートとして放射状に延びるように設置した。結果、これが見栄え的にも強度的にも大正解。母屋は少し角度をつけている。(クリックで拡大)
手前側(公道側)を自転車置き場中側から見た様子。これは左側。左の茶色い壁は家本体。
こちらは右側。下のほうは隣接する駐車場のブロック塀があるため、この位置までフェンス材を取り付けた。
公道側の全体。幅は約1.6m。奥側から放射状に垂木が伸び、この写真のようにほぼ均等に広がる形となる。
道路から全体を見た様子。白いボックスは自動販売機(全体を白く加工)。この時点では自転車置き場としては完成していないため、自転車が雨で濡れてもも問題ないように、100均のグレーの自転車カバーがかけらている。完成後はこのカバーをかけなくてもよくなる!
少しだけ、家の正面側からの様子。イペは最初のうちはこのようなきれいな茶色をしているが、次第にグレー色(まさにコンクリートのような色)になっていくらしい。
フェンス材は8枚。一番上にある板は、赤矢印部分のとんがり感が出るように加工を工夫。(クリックで拡大)
少し前の写真で屋根の上にポツポツと何かが見えていたと思う。デザイン上、フェンスの一番上をちょっと凝った構成にしたかったのだが、ビスでこの板(下側のフェンス材よりも厚みもあり重い)を止めるだけだと強風やビスの腐食で外れてしまう恐れがあるため、羽子板金具を使って固定した。本当はこの突起物が見えなければさらに美しかったのだが。

製作工程の続き・・・

自転車置き場としての骨格が組み上がったので、屋根材、雨どいなどの取り付けに移る。塗装については、家の茶色い壁と色をあわせることも検討したが、ハードウッドは次第にグレーになっていくということで、これもまた味かなと思い、まずは塗装せずにスタートすることにした。数年後に確認して、色合いが悪いようであれば、その時に塗装することを再検討したい。

屋根材にはポリカ波板の半透明タイプを利用した。こちらは、奥側。
手前側(公道側)。かなり暗い・・・。
屋根全体。ポリカ波板の固定は、「チャンネルボルト」というJ形のような金具を利用した。(クリックで拡大)
奥から入口方向を見たところ。写真真ん中の上の黒いバー状のものは雨どい。外から雨どいは見えないような構造になっている。赤枠(その他もあり)に羽子板金具を利用した。本来の用途ではないのだが・・・。
公道寄りの柱にたてといを設置し、自転車の出し入れ時に邪魔にならないように、自転車置き場外側にといを回して排水している。(クリックで拡大)
参考までに、2番目と3番目の柱を固定している写真。L型金具をコンクリートに埋め込んだアンカーに固定した。
拡大図。アンカーはコンクリート専用のドリルビットを購入して、電動ドリルでひたすら穴あけ。結構、大変・・・。(クリックで拡大)
家のルーフバルコニーから自転車置き場を見た様子。写真のように、雨どいは外に飛び出していないため見えない。構造上は倒れることはないと思うのだが、万が一のために、家本体から離れないように、金具で固定した。固定といっても家本体に穴を空けるわけでもなく、金具と木材の端材を組み合わせて、家側の外壁を挟み込んだという表現が正しい。(クリックで拡大)

製作費用

価格の高いイペ材をふんだんに利用したこともあり、DIY単品としては過去最高額を記録した。金具(アンカーなど)もちょくちょく追加購入したこともあり、この自転車置き場に投入した部材すべてが今となってはピックアップが難しいのだが、おおよその価格としては以下のような感じになる。デッキビスのようにすべてを使い切らなかったものもあれば、ボルト・ナットなども予備で購入した数量も含まれるため少し余ったりした。

材料用途数量価格(合計)購入方法コメント
イペ自転車置き場の骨格一式142,300木工ランド(通販)とにかく硬い木材!
10年は腐らないとのこと。
雨どい雨どい・たてとい・関連金具等一式15,549金物建材(通販)ホームセンター数件回ったが、このタイプは無かった
ポリカ波板屋根材、固定金具等一式11,470ホームセンターポピュラーな部材なので入手性は良い
金具柱固定のL型金具、アンカー等一式4,928ホームセンター一度に全ては揃えられず、こまめに通った
金具ボルト・ナット・ワッシャー・羽子板金具・ステンレスプレート等一式11,424ホームセンター同上。羽子板は最後の写真でL型に見えているイペ材を固定するときに利用。
金具ばら売りのボルト・ナット・ワッシャーなど一式9,566ホームセンター木材を固定するときに利用したM10*100mmなどの大き目の金具
金具デッキビス。フェンス材の固定用一式8,360ホームセンターコーススレッドとは違って、価格も高い!
合計203,597

イペ材は十数年にわたって腐らないというところを信じで奮発したのだが、それ以外の金具関係に想定以上の費用がかかってしまった。屋外施工となるため可能かなぎりステンレスのものを購入したためだ。

20万も投資して素人がDIYするというのはかなり勇気がいるのだが、完成後の佇まいを見ると家とセットで作られたような一体感もあるし、ぱっと見、素人が作ったようにも見えないところもあって、それなりに良いものができたのではと思っている。製作途中に、近所のおじさん、おばさんたちが声かけてくれて「上から落ちないようにね!」なんて会話も弾んだりして、コミュニケーションにも一役買った。

隣の駐車場&アパートはそれなりに年数が経っているため、いずれ建て替えによりブロック塀がなくなることが想定される。自転車が横からの風に晒されるようになるため、再度フェンス構成の追加検討が必要となると考えている。

また、年数を経たハードウッドがどのような色合い・状態になるのかを観察して、どこかのタイミングでご紹介したいと思う。

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