昔、小学校にあったような子供用の椅子
スーパーに行った時にあるお店に子供がお絵かきをするコーナーがあり、そこに昔、小学校などにあったような椅子や丸テーブルが置いてあり子供たちが楽しそうにお絵かきをする場面に出会った。うちの子供も一緒にお絵かきをしたわけだが、ちょうどそのときメジャーを持ち合わせていたため(DIYのための材料採寸のために外出時はほとんど持ち歩いている)椅子の高さと机の高さを測ってメモしておいた。椅子の高さは300mm、机の高さは550mmだった。これをベースに椅子と机をセットで作ってあげようと考え、まずは椅子から製作することになった。
理想的な椅子
椅子の構造としては、図にあるように背もたれが少し斜めを向いていた方が座り心地がよい。ただ、斜めに背もたれを加工するとなると、そのような加工をするための道具も持ち合わせていないため、今の自分の「自作」ではとても無理なレベルとなってしまう。そこで、何とか直線を組み合わせた状態で背もたれを斜めにできるような構造はできないものかと何度も考えた。
また、材料費はできるだけ安く抑えたい。数千円もしてしまうようだと買ってしまった方が良いということになるからだ。今回は、1*4や1*2などの比較的安価なSPF材だけで製作できるように設計を行う。
何枚も設計を起こしてはやり直しを繰り返しているうちに、ようやく思いついた案が次に説明する「設計図」のような構造だ。
設計する
上図が考えに考え抜いた!?設計図である。足の縦と横に位置する部分の角度を90度に保ちながらそれを少し傾けることで背もたれに角度をつけることを思いついた。このような構図のときに心配なのが下方向にかかる荷重により椅子がそのまま下方向に(ひし形になるように)圧縮されて潰れてしまわないかということだ。それを防止するために座面を支える横方向の板は、8mm径のボルトを利用してがっちり固定することにした。
利用する材料はフレームを1*2のSPF材で組み立て、座面になる部分のみを1*4のSPF材を4枚並べて固定する。座面の奥行だが、小さい子供用の椅子ということでどの程度の長さにすればいいのか、最適値がわからなかったのだが(あの時、測っておけばよかった)、なんとなく300mm程度であれば大きすぎず小さすぎずで大丈夫だろうと思い、利用する材料のことも考えてこのような設計になっている。
材料を調達する
材料は安価なSPF材を利用することに決めていたため、設計図のとおりに板取りを行っていく。二人の子供たちのために全く同じ椅子を2つ製作したいため、材料の準備も2つ分、これからの製作も2つ同時に進めていくことになる。後々の製作時も一つ失敗すれば、同じように失敗することにした。子供たちの取り合いを避けるためだ。
なお、直径が10mmのこげ茶の丸棒(マホガニー)も購入しているが、これは椅子のフレームや座面を木ネジで固定した後の穴を埋めるためのものである。椅子が白に近い色をしていることから、このこげ茶の丸い部分がアクセントとなっていい感じに仕上がる予定である。
購入は今回もまた近所のホームセンタ「Homes」である。ドイトにもよく行くのだが、1*4は販売しているのだが、1*2とか1*3とかのSPFが販売されていなかった。今回は長い距離のカットがないため、カットはすべて自分で行うことにした。
材料をカットする
椅子の製作ということで、足の長さがが数ミリ異なってしまうと水平さが確保できずにぐらついてしまったりする。そのため、同じ長さのものが2本あるものは2本ずつ、4本あるものは4本ずつカットする。こうすることで1mm程度長さが狂ったとしてもすべてが同じように狂うことになるため、後々の現物調整がやりやすくなる。
また、左右の2つのパーツが同じ大きさになる必要もあるため、椅子の各パーツは同じ順序でカットすることにした。すなわち、前側の足をカットするときは2脚分をカットしてから次のパーツのカットに移るという具合だ。
すべてのパーツは偶数本存在することになるため、同じようにカットしていき、すべてカットが終わった状態のものが下の写真である。この時点ではまだ座面で利用する1*4材はカットしていないが、なんとなくどのパーツが椅子のどの部分になるのかがイメージできそうだ。
フレーム部分の組み付け加工
椅子を支える部分となる一番下の横方向のパーツと縦方向のパーツ(前足、背もたれ部分)を90度を保ったまた固定するわけだが、この部分は10mmの切り込みを行い、ノミを使ってコツコツと相欠き加工っぽく仕上げた。また、椅子の横方向へのぐらつきを防止する一番下のパーツと座面下のパーツも5mmの相欠き加工を行った。うまく説明できないが、設計書に10mmとか5mmとか記載してあるのでなんとなくわかってもらえると思う。
相欠き加工が終わったら、8mmの木ダボを組み込むための穴を2つあけ、木工用ボンドを使って固定する。
フレームの組み立て
相欠き加工とダボ穴の加工が終わったところで木工用ボンドを使って組み立ててみると、椅子のフレームを形成する4つのパーツ(2脚分)のうち、1つがかなり狂っているではないか。所詮はアマチュアの手作業による加工ということもあり、少々ノミで削りすぎてしまったり正確に90度が出せていなかったりしたためだろう。
木工用ボンドが乾燥する前に、クランプやハタ金を使って4本のパーツが同じような角度、形になるように矯正する。幸いなことに背もたれ部分に当たるところは4本とも同じような精度にで組み立てができていたため、特に前側の部分(写真の丸の部分)と背もたれの一番上の部分の位置がそろうように木工用ボンドが乾燥するまで固定しておく。
木ネジで固定する
木工用ボンドが乾燥して完全に固定されたら、木ネジでさらに固定する。木ネジを打ち込む部分にあるクランプのみを外し(邪魔にならないところのクランプは念のため外さずに固定しておく)、10mmドリルで下穴をあけ、そこに50mm程度の比較的長い木ネジを打ち込む。木ネジは2つのダボ穴のちょうど真ん中を通ることになる。すなわち、2つの木ダボと1つの木ネジの合計3つで固定する。
その後、木ネジを打ち込んだ後の穴に木工用ボンドを少し入れてから同じ10mm径のこげ茶の丸棒を差し込み、玄翁できっちり叩き込んだ後にあさり無しの鋸で表面をなぞるようにカットする。
座面を支える横方向の部材を固定する
ここまでの工程で左右のフレームのうち、横方向のパーツ、すなわち座面を支える部分のパーツの固定を残すだけとなった。このパーツは座面の水平、椅子のぐらつきをなくすためにも重要な部分で左右の高さや角度がぴったりと一致していなければならない。そこで、これも2つセットで組み立てることになる。設計図をもとに取り付け位置にマーキングを行い、2つ重ね合わせて揃っていることを確認してから隠し釘で仮固定する。
隠し釘で固定したあと、再びクランプで2つセットで固定した後に椅子の床面に接する部分を加工する。前足の部分は鋸で設計書のとおりカットを行い、後ろ足の部分はカンナでコツコツと削っていく。途中途中で板をあて床面の直線度合を確認しながら、現物調整を続ける。
座面を支えるパーツをボルトで固定する
人が座る部分を支えるこの横方向のパーツだが、できればホゾ加工を行ってもっとスマートに組み立てたかったのだが、実際に作ってみるまで1*2材が強度的に大丈夫なのか、ホゾ加工で板の厚さが薄くなっても大丈夫なのか自信がなかったため、8mm(M8)のボルトを使って固定することにした。ボルトとナットの組み合わせは19mm厚の板が2枚分重なることを考慮して、ワッシャー、スプリング、丸頭のナットでぴったり固定されるように構成した。普通のナットだとボルトの先端が出ている状態になるため小さい子供が手を怪我したりする危険性があるからだ。
ボルトで固定したあと、前側の足が座面を支える部分から出っ張っているのだが、これを切り落として両側のフレームが完成した。
左右のフレームを結合する
左右のフレームを接合することで、椅子らしい雰囲気が徐々にでてくる。連結はあらかじめ相欠き加工してある溝の部分に1*2材をはめてることで行う。19mm厚の材料を5mmほど削っているため材料の厚さが少し薄くなってしまったことから、この部分は木ダボは利用せずに中心を木ネジのみで固定している。もちろん、木工用ボンドも併用だ。
木ネジを打ち込んだ後もこれまでと同様にこげ茶の丸棒を使って表面加工を行っている。
背もたれの部分の取り付け
下の部分が完成したら、次に上の部分にあたる背もたれを取り付けていく。すでにこの時点では椅子のフレームとしてグラグラするようなこともなくなっているため作業は行いやすい。
本来は、背もたれの部分こそホゾ加工を行ってしっかりと固定すべきなのだが、
- 背もたれのパーツが2脚分で合計8本、ホゾ加工するには全部で16ヵ所と数が多く手持ちの工具などを考慮すると加工に時間がかかってしまう
- 素人加工のため事前にすべてを加工しておくと、後々1,2mm程度の微調整ができなくなる
- すなわち、最終的な現物調整を行っても椅子のぐらつきや水平度が出せなくなる可能性が大きい
ということで隠し釘+木ネジでの固定とした。木ダボを利用するにも両サイドのフレームが組みあがってしまっているためダボ穴の調整ができないためだ。このあたりの構成は次回作成時の課題だ(いつ作成するかわかりませんが)。また、がっちり組みあがっていることの欠点として、木工用ボンドを使って取り付けるときにボンドがフレームの関係ない部分にくっついてしまう。これは雑巾で拭きとることでなんとか対応した。
座面の加工
最後まで残っていた座面になる部分のカットを行う。木材はSPFの1*4を利用する。この板は1脚あたり4枚利用することになるのだが、すべてきれいに360mmにそろえるために1枚1枚カットするのではなく、まず1枚単位で365mm程度の長さになるようにカットを行い、最後に4枚重ね合わせて360mmになるように同時にカットするという少々手の込んだカットを行っている。
カットが終わったら一番前に来る部分の板の上側を下の写真のようにカンナで削って傾斜をつけた。逆目にならないように板を選んだつもりだが、すべてがきれいにそろっているわけではないため、どうしても表面がぼこぼこになってしまうところが出てしまった。これも後から木工用パテを使って滑らかに仕上げることにした。
座面の取り付け
カットが終わったら座面を取り付ける。これが最後の組み立て作業となる。
まず、椅子のセンターにある横方向のフレームの中心が2枚目と3枚目の境界となるため、ここをマーキングする。あわせて、木ダボで固定するためのダボ穴を開け、位置決めジグ(ポンチ)をつけておく。先ほどのマーキングに手前から3枚目の板を揃えるとともに、両サイドの出っ張り具合が同じ長さになるように差し金を使って「現物調整」する。
ダボ穴まで含めて調整できたらあとは板の中心に合わせて木ネジを取り付ける。この取り付け加工は今まで何度も出てきた方法の繰り返しだ。あとは、残りの板も同じように固定していく。
仕上げ加工
組み立てが完了したら、木工用パテで細かい穴や加工時に残ってしまったキズを埋めていく。SPF材は非常に安いこともあり木のふしに当たる部分が穴として残っていたりする。また、相欠き加工で少しできてしまった隙間の部分も木工用パテで埋めておく。
木工用パテが乾燥したら、100番程度の少し粗めのサンドペーパーでパテの表面が滑らかになるように削る。そして最後に300番程度の目の細かいサンドペーパーで全体を磨いて細かい木の屑などが残らないようにする。
サンドペーパーで削った後に木の粉が残ってしまうので、これを使い古したハケで取り除き、その後雑巾できれいにふき取る。
表面の調整が完了したら、最後に水性ニスで仕上げる。後々汚れを雑巾で拭いたりすることを考えると、水性ウレタンニスを使うべきなのだが、普通の水性ニスを買ってきてしまっていたため、そのままこれを使った。まず、1回目を全体に塗って、乾いた後にもう一度全体を塗る。そして、300番程度のサンドペーパーで全体を磨いた後に最後の仕上げ塗りを行う。こうすることで表面を非常に滑らかに仕上げることができる。
※ 仕上げ作業時の写真を残していませんでした。
そして完成
完成後の写真をいくつか掲載してみた。実は、ここから下がデジカメの写真で今までの写真は携帯電話(SH903i/300万画素)で撮影したものだ。1台しかないデジカメを作製日に利用することができなかったわけなのだが、このサイズでWebに掲載するぐらいのものであれば携帯電話の写真でもなんとか実用になりそうなくらい、最近の携帯のカメラは進歩していることを実感した。
結局、いくらかかったのか(製作費用)
今回の製作費用をまとめてみた。椅子2脚分の価格である。なお、釘やニス、工具など共通的な費用(ストック品の利用分)は含んでいない。もちろん、工賃は「プライスレス」だ。
材料 | 用途 | 数量 | 価格(合計) | 購入方法 | コメント |
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SPF 1*2 | 椅子のフレーム部分 | 6 | 1,440 | ホームセンター HOME’S | 単価240円。はじめは1*4を縦に2つに切ってもらって製作することを考えていたが、これがちょうどよかった |
SPF 1*4 | 椅子の座面部分 | 1 | 396 | ホームセンター HOME’S | 単価198円。他の材料でも代用できたかも |
丸棒 910mm | 木ネジ後の整形用 | 225 | ホームセンター HOME’S | マホガニーという茶色い木材。本来はスピーカーや家具などで利用される高級木材らしい | |
ボルト 長さ50mm/径8mm | 椅子の座面を固定するフレーム部分の固定用 | 8 | 440 | ホームセンター HOME’S | ステンレス |
丸頭ナット | 椅子の座面を固定するフレーム部分の固定用 | 8 | 320 | ホームセンター HOME’S | ステンレス。普通のナットよりも少し価格が高い |
ワッシャー(大) | 椅子の座面を固定するフレーム部分の固定用 | 16 | 560 | ホームセンター HOME’S | ステンレス |
ワッシャー(小) | 椅子の座面を固定するフレーム部分の固定用 | 8 | 64 | ホームセンター HOME’S | ステンレス |
スプリング | 椅子の座面を固定するフレーム部分の固定用 | 8 | 120 | ホームセンター HOME’S | ステンレス |
ストックからの利用 (主なもの) |
・隠し釘 ・木ネジ ・木工用パテ ・木工用ボンド ・水性ニス |
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合計 | 3,565 | |
2脚合計で約3600円、1脚あたり約1800円。道具代や塗料など必要な物をすべて加えるともっと価格は高くなるが、純粋に今回かかった費用としてはそれなりに抑えることができたと思っている。あとは、ボルト/ナットを適用した部分で1500円ほどかかってしまっているため、ホゾ組を応用するなどしてこの費用をなくせば、さらにコストパフォーマンスもよく見栄えのいい椅子にできそうである。10円、20円の材料でも数量がかさむとそれなりの費用になってしまうことを実感した。
反省点としては木工用パテを見える部分に多用してしまったこと。経年変化によりパテを塗った部分とそうではない部分の色合いの差がだんだん目立つようになってしまっている。