長女の学習机(2012年1月)

長女の学習机(2012年1月)

構想(設計)1年、製作3ヶ月!!

 子供の成長とともにいよいよというか、木工好きにとって必然?というべきか、2011年は学習机を検討する年となった。1年以上も前から家具屋さんを見て回って机のデザイン・構造などを調査したり、ときにはメジャーを持って行って板1枚の厚さやサイズを測ったり、机の下側を覗きこんで構造を写真に残したりと、結構お店の人に注意されそうなギリギリの活動を継続すること約1年。
 Webでもいろんな学習机を見てデザインの参考にしたり、木工職人さんのサイトで木の組み方/接ぎ方を勉強したりした。その結果、自分なりに理解したことをまとめてみると。

  • 長く使われるような高級な机では引き出し部分にスライドレール(金具)を使っていない。金具の動作がスムーズにできなくなったとき、まったく同じ金具を交換用として確保出来ない可能性があるらしい。
  • パイン材などよりも硬い木(タモやナラなど)が利用されることが多い。
  • ベニヤ板ではなく、無垢材といわれる木を切り出したままの一枚板を利用することが多い。ただし、これは適材適所があるようなので、ベニヤだから悪いということではないようだ。
  • 室温・湿度によって木が自然に収縮するため、天板をきつく固定しすぎると割れやすくなる。天板固定には適度な遊びが必要。

 ある程度のラフデザインを行なってみてはMicrosoft Visioで詳細図面を描いてみて、製作のしやすさ(難易度)、完成後の利用時の便利さ、全体のコスト等を確認しては修正して、、、というのを約1年ぐらい繰り返す。様々なパターンで設計して最終的に「これで製作しよう」と設計が固まった時点で、ファイル数にして約50個ぐらいの設計図が出来上がっていた。不要な設計図もなかなか捨て切れない、、、。

基本構想

 要件定義ではないけれど、自分が作りたいもの、実現したい構成をまとめる。

  • 教科書、ノートを同時に広げるとなると、ある程度のスペースが必要なので幅1100mm、奥行き650mmとする。
  • 高さは標準的な730mmとする。(700-730mmぐらいのものが多いようだ)
  • PCや周辺機器などIT環境に対応させるために、机下にケーブル等を整理するための棚板をつける。これを「IT棚板」と勝手に呼ぶことにする。実際に僕が利用している机の下にも棚板を後付けしており、電源タップや各種ケーブル、スイッチングハブなどの小物類を設置している。
  • 天板下には引き出しが必要。引き出しはスライドレールを使わない。片方はA3サイズの用紙も入るサイズとする。天板下に引き出しがない机もあるが、「子供が小さいうちは、手元に引き出しがないと子供も不便ですよ」と家具屋さんがおっしゃっていた。隣に置いたワゴンにすぐに手が届かないことを考慮してのこと。
  • 長く使うことを考慮すると引越もあるかも。ということで組み立て式にする。組み立て式にしたことで、一部のパーツ(板)が損傷してもその部分だけ取り替えることができる。
  • 足元(奥のほう)に収納用の棚を作る。
  • きちんと足が床に付かないと姿勢よく勉強に集中出来ないとのこと。高さ調整機能を盛り込む。

 設計の始めの頃は、高さ調整機能は盛り込んでいなかったのだが、浜本工芸の学習机を家具屋さんで見た時に「こんなにシンプルでかっこいい机があるんだ」とインスパイア!?されてしまった。それからしばらくは高さ調整機能を実現するための固定金具の調査や木の組み方の調査が続く。
 高さ調整機能がある机では天板が低い位置にあるとき、両サイドや奥側の脚部が天板よりも高いところに位置することになるため、これの圧迫感をいかに減らすかがデザイン上のポイントになりそうで、試考錯誤を繰り返す。
 そんなとき、参考になりそうな学習机をネット上で見つける。その学習机は天板の位置が上にあっても下にあっても側板(脚)の高さを天板に揃えられる。ただ、その机は通信販売だけになっているため実物を見ることが出来ない。外観の写真だけで構成を推測しながら設計を行った。
 結局、最終的な完成品は某社の机にそっくりになった。素人木工であり家族が利用する家具なのでそっくりさんになっても許してください。

設計

 ほぼ1年間設計ばかりしていて、これで設計完了!と決心したのは2011年の10月終わりごろ。設計過程の詳しい様子をうまく説明できないけれど、最終的に完成した図面の一部だけでも参考になればと”拡大表示対応版”で2つほど掲載した(クリックで図面が拡大されます)。
 ファイルの下側に多数のシートがあるように机だけでも様々な視線からの図面をおこして、加工時に間違わないようにしている。また、机と一緒に利用するラックやワゴンなども同じファイル(別のシート)で設計を行い、途中で机図面に貼り付けてみて、全体的な寸法(高さや奥行きなど)の確認を行なった。
 机天板の高さは50mmピッチで730mm/680mm/630mm/580mm/530mm/480mmの6段階にセット出来るようにした。高さ530mmや480mmは小学生ともなると利用する期間はほとんどないと思うが、幼稚園の年中/年長さんぐらいの時にも利用できるようにしている。

正面/側面/上面の3方向から見た図面を詳細化することで、部材の大きさや組み合わせ具合を3Dのように確認することができる。この図では詳細の数値が確認出来ないが加工位置に間違いがないように前後/左右の様々な位置からの寸法をVisioの機能を活用して記載している。(クリックで拡大)
脚部の組み合わせや天板下側の幕板との接合部分など、ありとあらゆる所の寸法・加工位置を記載しておく。片側からの距離だけでなく反対側からの距離も記載することで、設計時の数値の間違いを防ぐことが出来る。(クリックで拡大)

 加工・組立プロセスの説明で机の部品(構成品)を特定しておく必要があるため、下図のような名前でこの先の説明を行う。なかには本来の用語とは少し間違った使い方をしているものがあるかもしれない。家具製作の勉強のためにもまとめてみた。

点線の枠外にある、脚向板/IT棚板/脚側板/足元収納棚は一般的な机にはあまり見られない構成部品だと思う。

材料を調達する

 近所のホームセンターではどこに行ってもタモやナラなどの木材は扱われていないため、ネットで検索。今回お世話になったのはマルトクショップという四国/香川県のお店だ。これまでタモのような硬いといわれている広葉樹を使ったことがなかったため、このお店に問い合わせてみると無料でタモ材のサンプルを送ってくれた。また見積もWeb上のフォーマットに従わなくても、こちらが作成したPDFやExcelファイルを参考に見積を行なってくれる。途中、寸法の微修正/再見積にも何度も応じていただいた。ある程度の数量を注文すると送料も無料になるということもあって、マルトクショップさんでタモ材を注文した。
 このお店のすごいところは、規定上は”プラスマイナス1mmぐらいの誤差は許容範囲”ということになっているのだが、今回注文した限りにおいてはほぼ指定寸法どおり、1mm以上の狂いもなくカットされていた。その後、ブックスタンドやラックなども製作することになるのだが、いずれもマルトクショップさんにお世話になっている。試しの見積も快く対応してくれるので是非、お店のWebサイトを参照してみてください。

左右の脚部の加工、組立

 組み立て式の学習机ではあるが強度や安定感を確保するために、脚の一部分は組み立て式ではなく固定式にした。脚に脚側板や脚向板が組み付けられて骨組みを構成することになる。相欠きのようになっている部分は、ボール盤に取り付けた17mm径のドリルである程度の深さまで削っておき、最終的にトリマー(ストレートビット10mm)を利用して平らに仕上げている。

左右の脚・貫を加工した状態。ホゾ組で予定していたのだがタモ材が思った以上に硬く、端の方を10mm程度残してホゾ穴を加工することが難しかったため、写真の下側にある貫の両サイドが相欠きのような構成になってしまった。
接着剤や木ネジを利用せずにただ仮置きした様子。縦に長い部分が後ろ側になる。木材に貼っているテープは部品の番号や利用時の方向を記載したもの。こうやってテープにコメントを記載して貼っておくと、木材をキズ付けることなく用途をマーキングできる。

 脚部の組立では1メートルのBESSEY K-BODY REVO クランプが大活躍。この学習机を製作する前にオフコさんで4本セットのクランプフェアをやっていて、その時に購入したもの。このクランプは固定部分の面積が広く、しかもハンドル部分を逆方向に取り付けることで、締め付けるだけでなく広げる方向にも力を加えることができる優れものだ。

K-BODY クランプを活用。ある部分は締め付けるが、締め付けすぎて角度が90度よりも小さくならないように、別の位置で微妙に広げる方向にも固定しながら直角を確保する。最初に写真のL字に見える部分を固定するが、木ネジは使わずに木工用ボンドだけで接着する。直角の確認は、学生時代に電子工学の製図で利用していたSTAEDTLERの大きめの直角定規が役に立った。
その後、残りのパーツも使って目的通りの脚の形に組み立てる。この時点でも木ネジは使わずに木工用ボンドだけで組み立てる。左右まったく同じような構造にしなければいけないため、左右の脚を重ねあわせて複数箇所クランプで固定し、僅かなズレが発生しないようにする。

 木工用ボンドには強力な接着力が得られるというタイトボンド3を利用した。このサイトの情報は英語ではあるけれど、ネットで検索すると国内でも様々なショップが通販で扱っており入手性はよい。一度タイトボンド3で組み立てたものを解体するような強度テストは行なっていないが、ネットでの情報によると、あの白ボンドよりもかなり強固に接着されるらしい。

 こうやって木工用ボンドだけの組立で完全に固定された後に、木ネジ+丸棒による固定方法で最終的な固定を行う。ボンドで固定される前にネジ止めを行うと、ネジ止め時のドリルの振動やネジの回転力などによって木材がずれてしまうことがある。そのためネジ止めはボンドでの接着後に行うようにしている。

天板下の幕板の加工

 ここから先はすべて組み立て式となる材料の加工となるため、木工用ボンドの出番はない。天板下の幕板にもなり、引出しを支える地板を固定するためのパーツとなる板を加工する。合計6枚。幅は30mmと25mmの組み合わせ。”通し吸い付き蟻桟”という天板に吸い付けるような加工をやりたいのだがそこまでの技術はないため、鬼目ナットを天板にねじ込んでボルトで幕板を固定するやり方にした。

 幕板の取付は単に天板に固定するだけではダメなことも分かった。天板の奥行きは650mm。これだけ板の幅が広くなると、温度や湿度の変化によって木が伸縮するらしいのだ。どこかのサイトでは、「机のような幅の広い家具の場合、無垢材を利用すると1cm程度伸縮する」という本当?というような数字まで記載されてあった。数値の真偽はともあれ伸縮することは間違いないらしく、幕板に遊びがないと”確実に天板が割れる”との情報もある。したがって、幕板の穴は長穴に加工し天板にボルトで固定した後でも天板の伸縮に対応できるようにした。

 鬼目ナットやジョイントコネクター(長いボルト)はムラコシ精工のオンラインショップで購入した。これらは様々な形/サイズがあるため必要な数量を注文する前に数種類のものをひと通り購入して、実際に組み合わせ後のサイズを確認してから最終的に必要数量を購入した。

写真の一番外側(両サイドとも)が脚に固定された脚側板と固定される。そのすぐ内側(端から2本目。両サイドとも)が左右引き出しの外側部分になる。真ん中の2本は長いほうが脚向板に固定され、短い方が左右の引出しの真ん中部分に位置する。このようにボルトを通す部分の穴は天板の伸縮に対応できるように長穴になっている。長穴はドリルで円が接するように2つ穴を開けた後、その真中部分を更にドリルで削る加工を行なっている。
幕板はこのように机の天板下部に配置される。写真では長穴が26個見えるが、これらのほとんどが天板にボルトで固定される。(ほとんどと書いたのは、組立後、いくつかボルトを固定しなくても強度が確保できそうなことがわかり、締めていないものもあるため)
鬼目ナットと固定するためのジョイントコネクターを調査したところ、最長のものでも70mmまで。幕板の高さが76mmあるためこのままだとボルトの長さが足りない。そこで23mm程度の深さの穴を加工して、70mmのジョイントコネクターでも天板に固定できるようにした。ボルトの皿の部分が幕板内にすっぽり入ってしまう構造だ。
試しに幕板にジョイントコネクターをさして、鬼目ナットを締めててみた。この鬼目ナットのサイズはM6の長さ16mm。鬼目ナットが天板の下部(裏面)にうめ込まれて、幕板と天板が接合される。天板には深さ20mmの下穴を開ける。

まだまだ続く幕板の加工

 真ん中の幕板と奥側の幕板は、ホゾではないけれどそれに近い構造にするための加工を行なった。

幕板の下側。今見えている部分が床側になるように天板に固定される。ジョイントコネクター(70mm)で高さ76mmの幕板を固定するために先述の通り全ての固定部分を約23mm繰り抜いている。矢印の部分が接合を工夫したところ。
実際にはこのような位置関係になって天板下(裏面)に固定される。(写真の真ん中と奥の幕板は左右を間違って配置したまま撮影してしまっている)
幕板を上から見たもの。すなわちこの面が天板下に接合される形で固定される。先ほどの写真の真ん中部分の位置関係は撮影時の仮組みが間違っており、実際にはこのように右側の引出しの幅が狭く、左側の引出しの幅が広い構造となる。

引出しをのせる地板とIT棚板を固定する部分の加工

 まだまだ幕板の加工は続く。
 この学習机の一つのポイントとしてIT機器への対応を盛り込んでいる。PCを利用するようになると、LANケーブルや電源タップ、場合によってはポータブルハードディスクやスイッチングハブなど様々なITツールも合わせて利用するようになる。それらは見えないところに設置していても問題ないことが多く、そのほうが机の上がすっきりしてじゃまにならない。そのため、机のすぐ下の地板と同じ高さの位置に100mm幅の棚板を取り付けて、IT用の棚板として利用できるように工夫した。
 地板とIT棚板も固めの木材を利用したかったが、コストの関係でラジアタパイン集成材を利用した。

内側に位置する3つの幕板に対して地板とIT棚板を取り付けるための加工を行う。地板は奥行き350mm、IT棚板は奥行き100mmでそれぞれ14mmの厚さの板を利用する。それらの板がぴったりはまる幅に写真のように加工する。板の厚さ14mm分、幕板を削ってある。真ん中の幕板は次の写真のような構造になるため、奥側の形状を考慮しIT棚板取り付け部分の加工幅を80mmとしている。
幕板の加工がすべて完了したのでIT棚板と一緒に並べてみた。これを仮組みすると、、、。

IT棚板を仮組みするとこのような構造となる。

IT棚板は左右両端と真ん中に四角の開口部が出来る形となり、ここから電源ケーブルやLANケーブル、その他の配線を通すことができる。この棚はわずか100mmの奥行きではあるが、PCを使いこなすようになってくると、こういう棚があるのとないのでは、ケーブルや小物などの整理のしやすさが断然違ってくる。

脚側板、脚向板、天板などの大物の加工へ

 細々?したものの加工が終了したので、次に脚向板と脚側板、天板の加工を行う。脚向板、脚側板についてはボール盤テーブルを使うことで、ほぼ正確な位置に垂直に穴を開けることができる。ただし、ボール盤のフトコロ寸法が125mmしかないため、中心部に近い方は神沢鉄工のドリルガイドを使って穴を開けた。

 このドリルガイドは垂直に開けるための用途を主としており角度調整機能がないが、作りはしっかりしている。ただ、ドリルチャックの回転部分にわずかに遊びがありうまくドリルのセンター位置を合わせないと穴が長方形のように少しぶれてしまうので注意が必要だ。

机の左右の脚を連結するための脚向板に穴を開ける。この穴の位置に天板を支える幕板が固定される。幕板の固定は直径9mmのジョイントコネクターを利用するため、穴のサイズは9.5mmにしている。脚側板にも同様に幕板固定の穴を開ける。
脚側板にも9.5mm径の穴を加工する。9.5mm穴は脚向板、脚側板ともに50mmピッチ。この穴を利用して天板の高さ調整機能を実現する。
脚側板はこの写真のような方向(板の断面)にも穴を開ける。この穴に鬼目ナットをねじ込み、左右の脚の後方に位置する730mm高さの支柱とジョイントコネクターで固定する。厚さ25mmのタモ集成材の中心線上に鬼目ナットねじ込み用の9mmの下穴を開ける必要があるため、板の両側を同じ厚さの板で挟んで板の厚さを少しでも厚くして、ドリルガイドを使いやすくする。ドリルガイドの左右の黒い丸棒で挟んでドリルの回転方向に固定することで、ドリルガイドとドリルがブレることなく板の断面に垂直に穴を開けることができる。
脚側板加工時の様子を真横から見たもの。脚側板の厚さが25mm、両側で挟み込んでいる板の厚さが14mmなので合計53mm程度の暑さの”板”を加工していることになる。こうすることでドリルガイドのブレを少なくできる。なお、ドリルガイドの固定が写真とは反対(右側の黒い棒が奥になる方向)になっていると、ドリルの回転時にドリルガイドも一緒に回転してしまうような力が働くので必ずこの写真のような位置関係で固定する。
天板(裏面側)と脚向板の加工後。天板に空いている穴の部分に長さ16mmの鬼目ナットをねじ込む。最終的にはジョイントコネクターを利用して幕板を天板と固定する。天板を上から見て左側(写真では下側部分)にデスクスタンドライトを固定したりケーブルを通すための長方形の切り欠きを作った。使い勝手を考えて右側にも切り欠きを作ることも考えたが、穴がたくさんありすぎて消しゴムとか小物が落ちてしまうかもと思い、片方だけの加工にしている。
天板の切り欠き部分の拡大。サイズはおよそ幅70mm、奥行き25mm。直径10mmのストレートビットを使いトリマーで加工した。なので、コーナー部分のRは半径5mmである。トリマー加工時によくあることだが、よく見るとコーナーの部分が焦げている。後でサンドペーパーで削っては見たもののなかなか焦げの部分が取れず、「ま、見えない部分だからいいか」と妥協する。

 これで天板、脚側板、その他の板物の加工が完了。相当の数量の穴を開けた。天板の手前側の角はトリマーで丸く加工している。脚側板の角も写真ではわかりづらいが丸く加工している。角張った部分があると子供が怪我もしやすくなるため、かなりの部分をトリマーを使って丸く加工している。

天板、棚板、側板などの大きな板の加工が完了

 引出しをのせる地板については、後で手前側を少し刳り抜くような加工を行なっている。研磨はすべての材料において100mmのサンドペーパーで軽く表面を磨いて毛羽立ちやマーキングテープの跡などを取り除き、次に240mmのサンドペーパーで表面がなめらかになるまで研磨を行った。天板については、仕上がりの良さを追求して更に400mmのサンドペーパーで丁寧に仕上げ研磨を行った。おかげで天板はツルツルに仕上がった。ちなみに、プロはサンドペーパーはあまり使わないで、カンナで仕上げるらしい。

 研磨時は細かい粉塵が発生する。サイクロン集塵機のダストポートを持ってサンドペーパーと同時に動かしながら研磨するにも無理があるため、とてもとても寒い冬の日ではあるがベランダで作業を行った。

塗料にはオスモカラーを利用

 塗料も難しくて奥が深い領域だと思う。今までウレタンニスをメインに利用してきたが、ウレタンニスの場合ツヤツヤの感触が得られるもののキズが付いてしまうとその部分だけが白く変色してしまい、修復不可能になってしまう。今回はウレタンニスは使いたくなかったので、ワックス系塗料を中心に調べた。

 ワックス系塗料にも蜜蝋とかカルナバとか(車のワックスもこれ)いろんな種類があるらしく、中には数種類のものをブレンドして利用するものもあったりと、かなり奥が深い。さすがにブレンドなんて出来ないのでお手軽コースで探し、化学成分を使わない自然塗料であり子供がいる環境でも安心して使えるというオスモカラーを利用した。エクストラクリアーとノーマルクリアーで選択を迷ったが、ノーマルクリアーのほうがワックス成分が多く保護力が優れているということなので、ノーマルクリアーを利用する。

オスモカラー、ノーマルクリアー。0.75リットルで約6,000円。塗ると言うよりは、豚毛でコシが強いオスモブラシという専用の刷毛を使って刷り込む感じに近い。あまり厚く塗る必要はないが塗り漏れがあるとその部分だけ微妙に色が違って見えるのでよく確認する。塗り漏れがあっても後から塗れば同じように仕上げられるけど、塗り漏れを発見したときは悲しい。自然塗料で子供がいる環境でも大丈夫とはいえ、乾燥する前のにおいはなかなか強い。寒い冬にもかかわらず窓全開で塗り、一晩中、窓も開けておく。
塗り終わった後、乾燥させている様子。ノーマルクリアーの場合、乾燥24時間となっていたが、12時間程度でも乾燥してそうな感じだった。水分を含んだものを木材に塗ってしまうと、いくら事前にサンドペーパーで綺麗に磨いていても木の繊維が水分を含むことによって毛羽立ちのようなものができてしまう。でも、タモ+オスモカラーの場合、少し厚手の布(使い古したチノパンとか)で木材の表面を磨くと、毛羽立ちも取れてツルツル・ピカピカの表面を作ることができた。

 ツルツル・ピカピカの表面にできたといっても、ウレタンニスで仕上げた時のようないかにもコーティングされたという仕上がりではなく、木そのものに触っているような感じの自然な仕上がりだった。もっと早くオスモカラーを知ってたらと感じた瞬間だった。

組立家具を実現する鬼目ナット、ジョイントコネクター

 組み立て式の学習机にするために金具についてもかなり情報収集を行った。このような装飾系のボルトやナットがなかったら、組み立て式は諦めていたかもしれない。プロの木工家からみれば、金具を使うことは薦められるような工法ではないと思うが、鬼目ナット/ジョイントコネクターをうまく組み合わせることで、素人なりに非常に面白い組立家具が今後も作れそうだと感じた。近所のホームセンターにも鬼目ナットやボルトは販売されていたが、同じ種類・サイズを大量に購入したいためムラコシ精工のオンラインショップで購入。
 写真のような組み合わせで利用したが同じ列で複数箇所を固定するため、このペアを大量に利用している。後で利用した個数もまとめてみたい。

利用した鬼目ナットやジョイントコネクター

 組み立てるときに気づいたことだが、利用するボルトの長さはできる限り同じ長さに揃えておけば、利用するボルト長が違うために、組み立て時に設計図面をその都度確認する必要もなかった。例えば、60mmと70mmのボルトを利用しているところを、これをすべて70mmに統一するというやり方だ。

 誤算だったのは”GBタイプ”という焦げ茶色のものは、きつく締め付けた後に緩めて外すと茶色の跡が木材に残ってしまうことだ。そのため、一度閉めたら引越し運搬時などに分解するまで固定された状態になる部分はGBタイプを利用し、高さ調節などで何度も外す部分にはシルバーの”ニッケルタイプ”を慌てて追加購入した。金具の色移りも今後の製作における改善材料にできた。

 下は鬼目ナットをねじ込んだ様子(赤矢印部分)。このようにあらゆるところにねじ込んでいる。9mm下穴に10mm程度の径の鬼目ナットをねじ込んでいくためかなり手が痛い。しかも埋め込む数量も相当多い。割れそうな危険性を感じたらすぐにやめる。
 天板と幕板の固定に利用する鬼目ナットは少しでも長いものを利用したい。ただ、天板は厚さが25mmのため20mmの長さの鬼目ナットを利用すると、下穴を開けるときに少しでもミスってしまうと天板を貫通させてしまう恐れがある。そのため、天板には長さ16mmの鬼目ナットを利用する。組み立て時に確認できたが、カチッとくっついたような感じに強度が確保できていそうだ。

大量の鬼目ナットを利用

 天板の厚さを40mm、50mmと厚くしていくと高級感も増し机も丈夫になりそうだが、木はどうしても温度/湿度の変化で反ってしまう。板が厚すぎると反りを抑えることが逆に難しいらしく、25mmと30mmを比較してコスト優先で天板厚さを25mmにした。田舎の蕎麦屋に厚さ50mmぐらいもありそうな座卓がおいてあったとき、かなり反っているものを見たことがあるが、あれと同じ事らしい。ちょっと余談。

いよいよ組立

 塗装も終わり、いよいよ組立へ。

最初に机の下側に設置される足元収納棚を組み立てる。といっても2枚の板をジョイントコネクターで結合するだけだが。この足元収納棚と脚向板を利用して左右の脚を連結する。
脚の空いている上側の部分に脚側板を固定する。脚側板は脚の貫の部分と4箇所(白矢印)、後の支柱の部分と2ヶ所(青矢印)で固定する。脚側板の高さ位置は自由に変更することができて、例えば天板の高さと揃えたりとか、天板から文房具などが落ちないようにするために天板より少し上の位置にしたりなど、高さを調整することができる。
先ほどの状態で後ろから見た写真。青矢印2ヶ所で脚側板を固定している。一番上の丸印部分も固定することで脚側板をより安定させることができたのだが、脚側板を下の方に下げた状態で利用するときに、この支柱に穴が開いた状態が正面から見えるのがなんとなく嫌で、ここには穴を開けなかった。これでも強度的には大丈夫そう。ちょっと揺らしてもギシギシ音がしたりしない。
天板を載せる直前の状態。天板を支える幕板が脚側板、脚向板の合計3ヶ所取り付けられる。真ん中の幕板は引出しをのせる地板の固定も兼ねており、単純に後ろ側の幕板に突き刺しているだけで宙ぶらりんの状態である。幕板の矢印部分にも鬼目ナットがねじ込んでありボルトで固定できるようになっているのだが、ここを固定してしまうと天板の高さ位置を変更するときに天板からこの幕板を完全に外さないといけないことがわかり、結局この部分はジョイントコネクターでの固定はやめた。
この3つの幕板が天板下(裏面側)に取り付けられる。真ん中のものは先程宙ぶらりんになっていた幕板である。これに引き出しをのせるための地板と奥に位置するIT棚板が固定されることになる。地板とIT棚板を固定するためにこの幕板にも鬼目ナットを埋め込んでいる。
厚さ25mmのタモ無垢材でできている天板をのせる。そしてその天板に引き出しをのせる地板とIT棚板を固定するための幕板をジョイントコネクターを使って固定する。このように左右両側の幕板を2枚重ね構成にすることで、天板と地板・IT棚板・引出し一式が一体となった状態で取り外すことができ、左右両端および脚向板に取り付けられている幕板のみが取り付けられた状態で残る。結果、高さ調整は幕板だけを動かすことでできるようになり、重たい天板を支えながら高さを変更するような作業を行わなくて良くなる。
真ん中の幕板部分を拡大。白矢印は天板と固定しているジョイントコネクター。赤矢印の鬼目ナットがいくつか見えているが、この鬼目ナットに地板とIT棚板が固定される。
参考として右側の幕板部分。脚側板と固定するための幕板と、地板・IT棚板を固定するための幕板の2枚構成。
天板すぐ下の奥の方にIT棚板が固定される。IT棚板は地板と同じ高さになる。
IT棚板の拡大写真。左、真ん中(正確には少し右寄りにオフセット)、右側と3ヶ所にケーブルを通すための開口部が確保される構造になっている。
引出しをのせる地板を取付け。もともと手前側の窪み(台形状にカットされている部分)は予定していなかったのだが、より引出しを開けやすくするためにこのような形に加工した。地板は塗料を塗る前に仮組みを確認した時の撮影なので多少色合いが違って見える。地板とIT棚板の間には140mmのスペースがあるため、引出しを取り出すとここに手を入れて配線など整理できる。引出しの後ろ側も脚向板にぶつからないようなサイズを確保している。
上から見たところ。矢印部分のところに、デスクスタンドライトを固定するとともにいろいろな電源ケーブルを通したりする。
ジョイントコネクターで固定した部分。組立後に外す/取り付けるを繰り返さないであろう部分はGBタイプ(焦げ茶)のジョイントコネクターを利用した。高さ調節のように組立後にも取付/取り外しを繰り返す部分はニッケルタイプ(シルバー)のジョイントコネクターを利用した。色合い的にはGBタイプのほうが重厚感があっていいかなーと思っていたのだが色移りの問題があり、、、。
机下部の足元収納棚部分。左右の脚を連結する重要なパーツであるが、利用頻度の少ない書籍や箱物の収納など棚板としての機能を果たす。

引出しの製作

 最後に引出しを製作する。なぜ最後かというと、引出しの両サイドと幕板との隙間は1mmの寸法で設計しているが、とはいっても所詮は素人木工・手作業なので製図したとおりに0.5ミリ単位(0.5mm程度の誤差は許容される)の精度で組み立てることは難しい。よって、現物合わせをしながら、引出しの出し入れ時にスムーズに動くような遊びを確認しながらカット、組立を行う。

引出しはあられ組みによる接合。複数枚を重ねて加工することで同じ精度で仕上げられる。ルーターテーブルがあればもっと段数の多い細かなあられ組接ぎにできるのだが、細かいノミも持っていないのでこの程度の加工になった。底板は4mm厚のMDFを利用。側板、前板、向板に4mm幅の溝をトリマーで掘ってそこに底板をはめるだけの構造にしている。まだ、この時点では向板(後ろ側の板)は取り付けない。
先ほどの状態で机に収納する。すでにデスクマットやその他小物類が置かれている、、、。
先程、向板を取り付けていなかったのは、このように前板の位置調整をしやすくするためだ。底板がスライド出来ない(後ろ側に動かない)状態になっていると、クランプで軽く固定しながら微妙な位置調整を行うことが出来ない(底板がじゃまになってクランプで前板2枚を挟めない)。左右・真ん中の幕体、天板との隙間が均等になるように何度も目視確認しながら”ここだ”と決まった時点でクランプでしっかり固定する。その後、引出しを机から取り外して、引出し内側から皿ネジで前面パネルを固定する。前板の固定では接着剤は利用しない。
最後に向板を取り付けて引出しが完成。ここは丸棒は使わずにネジ止めだけ(ネジが見える)にしておく。底板を破損した場合でも交換ができるようにするためだ。なお、後端が少し長くなっているのは、引出しを引っ張りだしても机から落ちないようにするため。引出しフルオープン状態にした時に、天板(裏面)を傷めないように角を丸く加工している。

ついに完成!

 完成後の様子。椅子は座面や背もたれのファブリック部分の作り方などが難しそうだったので、浜本工芸の昇降チェア(DSC-3104/ピンク)を購入した。なんと椅子だけで25,000円ぐらいする。さすがにものは良かった。
 マルトクショップから配送されきた時の木材の重量を考慮すると学習机の総重量は40Kgオーバーになっており、かなりどっしりとして重厚感があり、自分で言うのも恥ずかしいが全然安っぽく見えない。

完成後、デスクマット、スタンドライドを設置した様子。このように左側の脚側板は最上部まで、右側の脚側板は天板の高さに揃えるといった利用方法ができるのが特徴。ずっと前に製作した右側に見える子供用机と並べた時に、”壁”を作ることがなく、下の男の子と仲良く並んで勉強・お絵かきなどができるのがグッド。
浜本工芸の椅子と一緒に。カタログでの椅子の色は”ナチュラル色”だが、まるでセット商品かのようにピッタリの色合い。脚側板や脚向板にはコスト削減のためにタモ集成材を利用しているが、こうやって見ると横方向の木のラインがデザイン的にも溶け込んでいて、これはこれで良かったなと思った。

 2011年11月から製作を始めて完成したのが2012年の1月終わり頃。ほとんどの土日のお昼はこの作業をしていた。朝方や夕方は作業音も気になるため10時すぎぐらいから始めたとしても16時には作業終了にしていたので、約3ヶ月ぐらいかかってしまった。

 製作時の音はそれなりに響いていたらしく妻が近所の人に「おたくのご主人、大工さん??」と言われることもあったらしい。明るい時間だけの作業にしておいてよかった。

その他詳細

 参考までにその他の詳細部分。

現在は、右側は天板と脚側板の高さを合わせて利用している。左側は天板より高い位置に脚側板をセット。これが一番高い位置になる。2月頃から学習机を利用していたが利用開始から5ヶ月ぐらいですでに天板を1段アップ。
引出しをフルオープンにした状態。引き出し側板を長めに設計しているため、フルオープンにしても引き出しが落ちない。右側の引出し内部には、厚さ4mmのMDF板を利用して仕切り板を作ってあげた。仕切り板は細かく位置を変更できる。
幕板の厚さ分だけ、引出しの前板が長くなっている。引出しの側板と前板の上面を揃えている。天板や脚側板との隙間は2mmぐらい。多分、2mmないはず。
引出しを少し開けて、横から見た様子。引き出しはあられ組接ぎ。前板を引き出しの高さ分より少し高くすることで、前板に開けるためのツマミを付けたり、前板の下側に手を入れる部分を掘ったりしなくても済む設計にした。天板や前板の角を丸く加工しているのがよく分かるショット。
引き出しフロント部分を下から覗いた様子。当初の設計では地板に台形状の切り込みは予定しておらず、前板と地板の間に約15mmの隙間を確保していたためここに手を入れて引出しを引っ張りだすようにしていた。でも写真のようにもっと広く隙間を確保したほうが引き出しが開けやすそうだと考え、加工途中で設計変更した。

製作費用は

 今回の製作費用のまとめ。木ネジ・丸棒などストックから利用したものや塗料・サンドペーパーなど追加で購入した消耗品・工具などは含まない。

材料用途数量価格(合計)購入方法コメント
タモ無垢板、タモ集成材引出し、地板、IT棚板以外の部分すべて一式31,740マルトクショップ20,000円以上購入だと送料が無料。カットの精度も素晴らしい。オススメのお店です。ちなみに、タモ無垢板の天板(25*620*1050mm)は13,160円。
ラジアタパイン集成材地板、IT棚板12,180ドイト400*1200*14mm。地板とIT棚板にカット
ラジアタパイン集成材引出し11.980ドイト350*1200*14mm。60mm幅でカットしてもらう
MDFボード引き出しの底板2536ドイト厚さ4mm。2枚分の価格
鬼目ナットD-M6×L25側板等451,215ムラコシオンラインショップ単価27円
鬼目ナットD-M6×L16天板裏面26468ムラコシオンラインショップ単価18円
ジョイントコネクター JCB-B-M6×L70 (六角レンチ,GB)固定部分401,080ムラコシオンラインショップ単価27円
ジョイントコネクター JCB-B-M6×L60 (六角レンチ,GB)固定部分488ムラコシオンラインショップ単価22円。これはすべて70mmに統一できた。反省
ジョイントコネクター JCB-B-M6×L40 (六角レンチ,GB)固定部分。地板、IT棚板部分12192ムラコシオンラインショップ単価16円
ジョイントコネクター JCB-A-M6×L45 (六角レンチ,ニッケル)高さ調整部分8352ムラコシオンラインショップ単価44円。GBだと色移りしてしまったため
ジョイントコネクター JCB-A-M6×L50 (六角レンチ,ニッケル)高さ調整部分6276ムラコシオンラインショップ単価46円。GBだと色移りしてしまったため
飾りナット JCN-A-M6×L17 (六角レンチ,ニッケル)高さ調整部分。ジョイントコネクターの反対側になる14630ムラコシオンラインショップ単価45円。GBだと色移りしてしまったため
合計40,737

 タモのオール無垢板(集成材を一部利用しているが)で製作した学習机が約40,000円とは安い!といえるのではないでしょうか。僕が参考にした某社の学習机は約8万円(その机は無垢板、突板の組み合わせ。突板が悪いわけではないよ)。その他、無垢板の学習机をネットで探してみても、ほとんどが10万円以上の価格が付いていることが多く、プロの木工家が作った学習机だと20万円に近い価格になっている。それでも長く使うことを考えると安いのかもしれない。
 製作するために購入した電動工具やその他のオプションパーツ、塗料なども考慮するとさすがにこの価格ですべてカバーできないけれど、自分で作る楽しみや世界に一つだけしかないという満足感は実際に作ってみないとわからない。

 最後に、パパに学習机を製作する機会を与えてくれた長女へ「ありがとう」。家具屋さんにはもっと女の子らしくて可愛らしい机もあったけれど、「パパが作ってくれるのがいい」とずっと気長に待っててくれた。ほんとうにありがとう。

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