ようやく完成
学習机の完成から1年数ヶ月、ようやくデスクワゴンが完成した。学習机と組み合わせて利用するため、設計は学習机と同時に完了しており、しかも木材の発注も学習机の分とほぼ同時期に発注していたにもかかわらず、かれこれ2年近くかかっての完成となった。学習机シリーズはこのワゴンでひと通り完了となる。
基本構想
基本的に学習机とセットで利用するため、下記のような要件(実現したいこと)を盛り込んだ。
- ワゴンの天板の高さは学習机の天板の高さに合わせられるように可動式にする。
- 学習机と並べた時に奥行きがなるべく一致するようにしつつ、机下に入れた時にも机前面から飛び出さないように、最大限の奥行を確保する。
- 引出しは奥の物が取り出しやすいようにフルオープン式にする。
- 一番下の大きな引出しはA4のファイルケースが入る幅と高さを確保する。
- キャスターを取り付けるが、外からキャスターが丸見えにならないようにデザインを工夫する。
その他細かい考慮事項があるのだが、設計しながら数値を確定していった。
詳細設計
設計する上で意外に苦労したのが、学習机とデスクワゴンの天板の高さを一致させるという構造である。キャスターを使わないのであれば、単純に木材の寸法だけを確定していけばいいのだが、利用するキャスターの高さや取り付け方法によって1-2mm程度高さが異なってくる。高さを一致させるためにはキャスターの選択と取り付け方法も同時に決定しながら設計を進めなければいけない。
キャスターはプレート式とボルト式とで選択を迷ったが、ボルト式+鬼目ナットでの取り付け方法とした。強度的に心配したが、実際に取り付けてみても問題なかった。数字が細かくてほとんど設計図としては流用出来ないと思うが、微調整しながら設計を行なっている雰囲気を感じ取ってもらえればと思う。(詳細設計図はクリックで拡大表示されます)
天板の高さを可動式にするための部品として「天板昇降金具」があるのだが(市販されている学習机に使われているヤツ)、この部材がネットを探しても見当たらない。アトムリビンテックから販売されているはずなのだが、そのアトムの通販サイトを見ても見当たらないのだ。仕方がないので、上図のような構成にすることで天板の昇降(高さ調節)を可能としている。
残念なことにこの話には続きがあって、このデスクワゴンを製作する途中で、別の製作物の関係でアトムリビングテックの通販サイトを見ていたら、天板昇降金具が販売されているではないか(高さ調節範囲は140mm程度)。もっと早く見つかっていればこれが使えたのにと思ったが、そもそも今回のデスクワゴン自体が天板の高さの調節範囲として200mmも確保しなければいけない構成のため、結局この昇降金具は採用出来なかったことになる。結果オーライだったのかもと自分に言い聞かせる。
材料を調達する
今回も木材はマルトクショップのネット通販で購入した。天板と引出しのフロント側はタモの無垢材、その他はタモの集成材を利用した。ワゴンのボックス部分の天板のサイズ調整の関係で、フロント部分にウォールナットを使って奥行きを拡張している。上手く説明できないので、詳しくは製作途中の写真を見ながら説明したい。引出しの箱部分は、近所のホームセンターでラジアタパイン材を購入、底板部分は同じホームセンターでMDFボードを購入した。
側板の加工
今回の製作は、大まかにはワゴンの枠の部分(本体)、引出し、天板部分の順序で行った。まずはワゴン部分の側板から。
ちょっとしたアクシデント
次の加工に進む前にどうしても解決しなければいけない問題が2つあった。一つは集成材とはいえ板の反りが激しいこと。もう一つは、ワゴン本体の天板、底板として利用する板の幅が手前と奥側で1-2mm程度異なることだ。
天板と底板の加工
天板にはちょっとだけ小細工を仕掛けてある。ワゴンは上から見た時に、引出しの前板が隠れる(上から見た時だけインセット)ような構造にしている。しかし横から見ると引出しの前板がすべて見える構造(全かぶせ)になっているため、天板のフロント部分の幅が左右20mmずつ足りない。そのため、天板のフロント側に同じ厚さ20mmのウォールナットを使って引出しの前板と同じ幅の部分を結合させた。ワゴン本体の天板は”T字”型になる。
底板部分は下側の大きな引出しを引っ張りだした時に、収納物の荷重によってワゴンが転倒しないように するために 、引出し側に転倒防止キャスターを付ける構造にしている (転倒しないまでも、傾いたり、スライドレールが壊れたりする可能性がある) 。前板にキャスターを取り付けるという方法もあるが、それだと正面からキャスターが丸見えになってかっこ悪くなる。そこで、ワゴン本体の底板を少し切り取りつつ、その切り取った部分を引出しの底部分に付けることで、転倒防止キャスターをうまく固定できるようにした。
ワゴンの仮組み
ひと通り加工出来たのでワゴン部分を仮組みし、寸法等確認を行なってみた。仮組みなので、ただ板を重ねて置いただけの状態である。
側板、ワゴン本体の天板などのネジ穴加工
ワゴンの本体部分を組み立てる前に、鬼目ナットを埋め込むためのネジ穴や、天板に取り付ける支柱部分などの加工を行っておく。
引出しの前板を加工する
できるだけまとまった数量で塗装を行いたいため、引出しの前板まで加工を完了させておく。
組み立てる前に塗装
すべての部品の加工が終わったわけではないが、ワゴンの本体部分を組み立ててしまうと、塗料を塗りにくい部分等が発生するため、組み立てる前に塗料を塗っておく。デスクやラックと同様にオスモカラーのノーマルクリアを利用する。
鬼目ナットを埋め込む
オスモカラー塗装後、ウエスで綺麗に磨いた後に鬼目ナットを埋め込む。
ワゴン本体の組み立て
ワゴン本体の組立に必要な作業が完了したので、組み立てを行う(本体部分のみ)。
引出しの加工
引出しはあられ組み構造とした。あられ組といっても段数はかなり少ない。
上側の引き出しには鍵を付ける。利用したのはLANMPのシリンダー錠・ミリオンロックシリーズの一つで、No.2200-24という型番のものだ。シリンダー錠が引出し内側にはみ出した形で製作されているデスクワゴンの市販品もある。実際に加工もそのほうが楽なのだが、出っ張り部分があることで使い勝手も悪くなるし、デザイン上も格好悪いので頑張って埋込み式にした。
スライドレールの取り付け
引出しの前板/向板の加工の時から始まっているのだが、ここからは「現物合わせ」での神経戦が始まる。スライドレールはフルオープンタイプとなるがネットでいろいろと探してナカノの三段引きスライドレール 36mm幅 底付けタイプ NK360A-500を採用した。長さ500mmという一番長いタイプのものだ。
引出しの取り付け
スライドレール取り付け後に、引出しをインナーレールと完全に固定する。設計上は引出しの上面/下面のクリアランスは2mmとしているため、2mmの厚さの30cm定規を挟みながら現物調整を行った。
引出し前板、シリンダー錠の取り付け
引出しの位置合わせ(正確には引出しの側板のいち合わせ)が完了したので、前板の位置合わせと固定を行う。先ほど、底板や向板を固定していないと記載したが、底板、向板を固定してしまっていると、底板をスライドさせることが出来ないため、前板固定時のクランピング作業がやりづらくなる。上側からならクランプで固定できるのだが、そうすると引出しが完全に収納できないため、天板や上下の引出しとのクリアランス調整が難しくなってしまう。写真を見ると、この理由がわかっていただけるかと思う。
その他の加工
ワゴン本体関連でその他残っている部分の加工を行う。シリンダー錠の受座の取り付けと、転倒防止用キャスター取り付け部分の加工を行う。
天板の加工
天板は昇降式にしているため、天板を支えるとともに、反りを防ぐ桟(貫?)を加工し、脚部分に取り付ける。天板と桟の固定は鬼目ナット+ジョイントコネクター式として、天板の収縮に対応できるようにした。
完成披露!
ようやく完成。一番最初に作業記録として残している写真の日付が3月2日で引出しの仕切板まで完成したのが5月27日。なので、まるまる3ヶ月かかっての作業となった。
あまり片付いていないというか、ごちゃごちゃしてしまっているが、最後に学習机シリーズの全景を載せてみた。椅子だけは既成品で、浜本工芸の高さ調節椅子を購入している。
- 学習机
- ブックスタンド(机上に乗せているだけ)
- デスクワゴン(今回の製作物)
- 多機能ラック(上下伸縮できる)
ランドセルを収納している多機能ラックは幅を学習机の奥行きと同じ650mmにしているので、この先レイアウト変更などで机の横に設置した場合でも一体感が得られるような使い方ができる。
製作費用
最後に恒例の制作費用のまとめ。木ネジ・丸棒などストックから利用したものや塗料・サンドペーパーなど追加で購入した消耗品・金具などは含まない。デスク製作時にカウントしていたジョイントコネクターも今回は合計金額に含めなかった。デスクワゴン製作前にルーター、ルーターテーブルも購入しているが、そのような工具の費用も含んでいない。「事業」としてみれば、こういう物件費も勘案して本当の「値段」を算出しなければいけないのだが、ま、趣味の世界なので。
デスクワゴンの製作費用
材料 |
用途 |
数量 |
価格(合計) |
購入方法 |
タモ無垢板 |
天板 |
1 |
4,550 |
マルトクショップ |
タモ無垢板 |
引出し前板 |
2 |
2,620 |
マルトクショップ |
タモ集成材 |
ワゴン本体天板、底板 |
2 |
4,230 |
マルトクショップ |
タモ集成材 |
側板 |
6 |
3,420 |
マルトクショップ |
タモ集成材 |
側板 |
1 |
320 |
マルトクショップ |
タモ集成材 |
背板 |
1 |
1,520 |
マルトクショップ |
タモ集成材 |
天板の脚部 |
4 |
1,280 |
マルトクショップ |
タモ無垢材 |
天板の桟 |
2 |
880 |
マルトクショップ |
ウォールナット無垢板 |
ワゴン本体の天板フロント側 |
1 |
320 |
マルトクショップ |
3段引スライドレール |
引出し |
2セット |
3,920 |
ナカノ(通販) |
双輪キャスター |
|
3 |
1,218 |
MonotaRO(通販) |
双輪キャスター(ストッパー付き) |
|
3 |
1,548 |
MonotaRO(通販) |
シリンダー錠 |
引出し上段 |
1 |
2,169 |
MonotaRO(通販) |
ラジアタパイン集成材 |
引出し |
1セット |
2,778 |
ドイト |
MDFボード |
引出し底板 |
1セット |
756 |
ドイト |
MDFボード |
引出し内部の仕切り板 |
1セット |
|
|
|
|
合計 |
31,529 |
|
もっとも費用がかかりそうな部材=タモ無垢材/集成材を中心にコスト計算を行った上で、最終的な発注を行なっていたはずなのだが、すべての部材を合計すると、こんなにもかかっているとは想定外というべきか・・・。それでも無垢材を利用した市販のデスクワゴンよりは安価に仕上がっているとは思うのだが。
今回のはタモ無垢材、集成材を多数利用した贅沢な構成になっており、デスクワゴン本体の重量もそれなりになっているので、次回製作時にはコスト削減と軽量化を少しでも実現できるような設計にしたいと考えている。
デスクワゴンの完成後、小学1年の長女は鍵が付いていることが相当に嬉しいようで、貴重な収納物や秘密の物が無いにもかかわらずいつも鍵をかけて楽しんでいる。でも、その鍵は机上に置きっぱなしになっているんだけどね。
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